今さら言うまでもなく、AGPの株式はJALが30.46%、日本空港ビルが24.29%、ANAHDが18.29%と、上位3株主で実に73%を保有する状況となっている(24年3月末時点)。また、報告書ではAGPの売上高に占める3株主の取引の割合は伏せられているものの、JALはAGPが展開する主力事業すべてにおいて〈重要な顧客〉で、ANAについては「動力供給事業における売上割合に鑑みて」という条件付きながら〈重要な顧客〉としている。
もっとも、人的交流を見るとさらに分かりやすい。
というのも、01年のAGP上場からだけを見ても、一時大株主だった三菱商事出身者の約2年間(09~11年度)を除き、昨年4月に初のプロパーである現在の杉田武久氏が社長に就任するまで、一貫してJAL出身者がAGPの社長を務めてきた。このような系譜を考えると、「コストセンター」とでもいうべきAGPの状況もむべなるかな、なのである。
取締役会の重要情報が大株主出身役員から大株主に漏洩
ところで、先述のとおり、検証委は、AGP取締役会が非公開化提案をめぐって、大株主からの出向取締役や派遣監査役を適宜指定して情報を遮断したことの妥当性を認めているが、報告書にはこんなエピソードも記載されている。
昨年5月の取締役会において〈AGPの重要なビジネス情報に関する取締役会での議事内容が、ある大株主出身の役員から大株主側に漏えいしていた〉というのだ。
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意図してか、意図せずしてか、AGPの大株主への従属的立場の一端を明らかにした感のあるガバナンス検証委の報告書――。7割を超える圧倒的な資本の力の前にしながら、AGP取締役会は筆頭株主からの株主提案に賛成するのか、反対するのか。
現状、「同意していない」という態度を続ける中、AGPは5月21日にはANAHDに、翌22日には日本空港ビルに“正式判断”を求める書面を送っていたことを明らかにした。なお、JALはガバナンス検証委による報告書は一顧だにしない旨、すでに明らかにしている。
【AGP】ガバナンス検証委員会報告書の受領および今後の対応について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250521559977.pdf