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AGP 大株主JALに「従属の過去」を綴るガバナンス検証委報告書を公開

コロナ禍でJAL出身社長が「割引」の独断

報告書の結論自体は、JALの非公開化提案をめぐるAGP取締役会の行動を是認するものと言える。その前段でガバナンス検証委は、これまでの長期にわたるJAL以下、大株主とAGPとの関係についても、特に《第三 AGPとJAL、JAT、ANAとのビジネス連携の経緯》において具体的に掘り下げている(JATは日本空港ビルを指す)。

本章では資本関係や取引状況、人的交流、そしてAGPの上場維持に向けた取り組みが主にフォーカスされているが、〈過去の議事録等から判明した事情〉として、個別の事象にも触れている。そのひとつが、新型コロナウイルス禍におけるAGPのJAL他への「動力使用料金の減免措置」について。

2020年1月以降のコロナ禍を受けて経営危機に直面したJALとANAはAGPに対して、駐機中の航空機に電力や空調を供給する際の動力使用料金の減免を要請する。AGP自体も各空港から事務所賃料の減免を受けていたこともあって、料金の減免を実施したというが、〈この判断はJAL出身であった日岡社長の判断で行ったものであり、経営会議や取締役会では決議していない〉と報告書にはあるのだ。

ここにある「日岡社長」とはAGP元社長の日岡裕之氏のことで、1981年にJALに入社しニューヨーク支店長、執行役員総務本部長を経て18年6月にAGP社長就任、21年6月に退任している。

報告書によると、この動力使用料金の減免については20年8月から21年3月まで、サービスの公共性の観点からJALとANAだけでなく、日系航空会社を対象に売上ベースで10%の減免が実施された。ところが、JALとANAに対しては減免措置が終了した21年4月以降も、一定の条件が付されたものの、22年3月まで売上ベースで5%割引することにしたのだという。そして、この割引も〈日岡社長の判断で行ったものであり、経営会議や取締役会では決議していない〉。

さらに、JAL向けに行っていたサービスについても困難があったようだ。

AGPは固定式設備に加えて、専用車両(移動式設備)を使用して航空機に動力供給を行っているが、この事業は構造的に赤字であるうえ、実質的な単価は30年間変わっていなかった。そのため、AGPにおいて価格の適正化が長年の課題だったという。しかし、移動式は大半がJAL向けのサービスで、〈AGPでは大半の期間においてJAL出身者が社長を務めていたこともあり、価格の適正化が進んでいなかった〉。

そのような状況が続く中、23年8月の取締役会でも価格の適正化が議論されたが、その際の資料には「事業撤退等を含むドラスティックな方針転換を直ちに実行することはできない。(ほとんどが株主でもある JAL 向け対象事業のため)」と記載されていたことも報告書で触れられている。そして、報告書にはこうも記されている。

〈現在、動力供給価格の適正化を目指して航空会社と協議を行っているが、JAL及びANAとは合意に至っていない。〉