主要空港でインフラ事業を手掛けるエージーピー(AGP)は5月22日午前、筆頭株主の日本航空(JAL)から提案されている非公開化をめぐって設置した「ガバナンス検証委員会」から受領した報告書(開示版)を公表した。
4月25日にJALの持分法適用会社であるAGPは、JAL側から株式併合を通じた非公開化を株主提案されたことを受け、この約1カ月間、両社の間で応酬が続いてきたことは本誌でも既報のとおり。5月20日には、AGP側の5月13日付の質問状に対応するかたちでJAL側が回答書を公開している。
JAL“非公開化”AGPの公開質問状に公開反論【5月20日「適時開示」ピックアップ】
https://cgq.jp/series/jpx/8146/
JALの回答書の中でも指摘されているが、AGPとJALの間では株主提案のプロセスも含めて、認識の相違が顕在化している。そうした事情も背景に、AGP側は5月1日、外部専門家によるガバナンス検証委を設置し、5月20日頃までをメドに事態を客観的に検証、AGP取締役会はこの報告をもとに株式提案についての判断を示すとしてきた。
検証委は、先般のフジテレビの第三者委員会でも委員を務めた弁護士で公認不正検査士の山口利昭氏を委員長に、米投資顧問のホライズン・キネティックスでアジア戦略担当ディレクターを務めるワイズマン廣田綾子氏、色川法律事務所のパートナー弁護士である嶋野修司氏が委員を務める陣容。
いずれも、AGPとは利害関係のない人選という。なお、検証委はJALへの株主提案の賛否を示すものではない。
AGP取締役会の行動を認定
開示された報告書は60頁に及び7つのテーマから成るが、まずは検証結果について触れる。
ガバナンス検証委は《第六「認識の違い」解消に向けたAGP取締役の行動について》で、AGP取締役のJALの非公開化提案に関するこれまでの行動について総括している。
AGPは今年1月17日にJALから非公開化提案を受けて、取締役会からJALをはじめ、2位株主の日本空港ビルデング、3位株主のANAホールディングス(HD)出身とみられる役員(報告書では「特別利害関係人」となる取締役・監査役)を適宜指定して、情報を遮断してきたという。これについては後述するが、検証委は〈AGPによる利益相反排除の姿勢としては適切であり、特段過度に利益相反問題を強調したものではない〉とした。
また、今年1月以降のAGP取締役会の行動についても、〈少数株主保護の視点から、情報の非対称性の解消に向けた行動に終始しており、とくに自己の保身(自己の利益)のために行動しているものとは認められない〉。
そして、AGPはJALからの非公開化提案を受け、2月に社外取締役らだけで構成する「特別委員会」を設置、5月13日付のJAL取締役向けの質問状送付など、半ば前面に出る格好で活動を展開してきた。この特別委についても、報告書は〈少数株主の利益保護を最優先として、同社特別委員会規程を遵守した対応であり、特段過度に利益相反問題を強調したものではなく、支配株主が存在する従属会社の取締役として善管注意義務を果たしているものと認められる〉としている。
報告書は、以上のようにAGP取締役会の行動を総括。そのうえで、6月の定時株主総会でAGP取締役に期待される行動については、株主提案に対するAGP取締役会としての意見形成、さらにはAGPの少数株主自身による意見形成のために必要な情報を収集すべく〈JALとの交渉を続ける必要がある〉。
また、今回の非公開化に賛成しているという2位株主の日本空港ビル、3位株主のANAHDに対しても、その〈賛同理由についてできる限り明らかにされるよう、要請すべきである〉と提言した。
ただ、報告書には後段でこんな記述がある。
〈本委員会は、AGP関係者14名にヒアリング調査を行ったが、その面談の過程で「羽田村」や「コストセンター」なる言葉を何度も耳にした。〉
一体、どういうことなのか。