初のプロパー社長以下、AGP側は真っ向反対
JALの4月25日付の株主提案を受けて、AGPは4月28日、《株主提案に関する当社の認識と対応方針のお知らせ》と題したリリースを開示。JALが株主提案の理由としている内容には、〈事実に反する指摘〉や〈重要な事実でありながら言及が欠けているもの〉が少なくなく、〈当社少数株主をはじめとする当社のステークホルダーの理解・判断を誤らせる危険があります〉と真っ向から反発している。
AGP側によると、21年11月に当時のJAL社長との間で上場維持に向けた相互協力に合意する覚書を締結していたものの、今年1月17日になって突如、JAL側から執行役員名義の文書で非公開化の意向が表明されたという。これに対し、2月25日付で社外取締役等3名からなる特別委員会を設置したのをはじめ、フィナンシャル・アドバイザー(FA)に岡三証券、リーガルアドバイザーに柴田・鈴木・中田法律事務所を選任して対応。1月17日以降、対話を拒絶した事実は一切ないとしている。
さらに、非公開化で少数株主に支払う買取価格についても疑義を表明している。
JAL側は4月25日付リリースで買取価格を「1株1550円」と独自算定しているが、AGP側は対価などについては一度も協議されていないと主張。また、AGPが非公開化された場合、国内主要8空港で140社超の国内外航空会社に提供している動力が安定的に供給されるのかについても懸念を表明しているが、これに対するJAL側の明確な回答はないという。
そのような状況の中で5月1日、AGPは臨時取締役会で外部有識者によるガバナンス検証委員会の設置を決定。委員長には公認不正検査士(CFE)でフジテレビの第三者委員会委員も務めた弁護士の山口利昭氏、弁護士(色川法律事務所所属)の嶋野修司氏、米ホライゾン・キネティックス社アジア戦略担当ディレクターのワイズマン廣田綾子氏を選任した。
特別委は取締役会の諮問機関として、今年1月以降の事実関係の整理、主要株主との対話内容と意思決定等の整合性、そしてAGPの意思決定プロセスやガバナンス体制などの検証を行い、5月中旬から下旬をメドに報告書を提出する予定だ。なお、山口、嶋野両弁護士ともに大阪が拠点で、ワイズマン氏もニューヨーク在住という。
昨年4月に就任した唯一の代表取締役、杉⽥武久社長は初のAGPプロパー(1984年入社)だが、社長と社外取2人を含む9人の取締役のうちJAL出身者が2人、ANA(全日本空輸)出身者が1人を占める構成で、社外監査役3人はいずれも大株主出身者だ(常勤監査役のみプロパー)。さらに、杉田氏の前任社長の大貫哲也氏(現CKTS社長)もJALの出身で、歴代トップも大株主から選ばれてきた過去がある。
大株主3社合計で70%の議決権を握られる中、AGPは上場を維持できるのか。ひとまず、ガバナンス検証委員会の報告が待たれる。