【2025年1月7日「適時開示ピックアップ」】三菱ケミカル、富士ソフト、北海道瓦斯、工藤建設、DIC、兵機海運
1月7日火曜日の東京株式市場は3営業日ぶりに反発した。日経平均株価の終値は前日比で776円高い4万0083円と、4万円台を回復した。前日の米ナスダック市場の高値を好感した。このところの円安傾向も影響したとみられる。そんな7日の適時開示は150件。この中からコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。
「三菱ケミカル」米国の化学工場計画中止で損失200億円
東証プライムの三菱ケミカルグループは、米ルイジアナ州で検討していた化学工場の建設計画を中止すると発表した。
自動車のランプカバーや水族館の水槽、建材などに用いアクリル樹脂の原料を生産する予定だったが、既存の設備で当面の需要に対応できる見通しであることや、インフレで設備投資額が増えたことが影響したと説明している。
三菱ケミカルグループは減損処理などで2025年3月期第3四半期以降、約 200億円の損失を計上する見通しという。海外進出のリスクは重い。
【三菱ケミカルグループ】米国ルイジアナ州における MMA モノマープラント新設計画の検討中止に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250106546609.pdf
米KKR「富士ソフト」に“TOBのライバル”ベイン提訴を要求
東証プライの富士ソフトは、株式公開買い付け(TOB)を進めている米投資ファンドのKKRからレターを受け取ったことを明らかにした(本誌既報記事一覧)。
レターでKKRは富士ソフト側に、買収提案でライバルだった米投資ファンドのベインキャピタルに対し、秘密情報の破棄などを求める訴訟を起こすよう求めている。
富士ソフトは昨年12月中旬、ベインキャピタルによるTOBに反対し、KKRのTOBに賛同することを公表した。KKRは、ベインが「同意なきTOB」を予告しているものの、実際にはTOBを行えない可能性が高いと指摘。
さらにKKR側は自社のサイトでもベインの振る舞いを激烈に批判するリリースを展開。「プライベート・エクイティ(PE)ファンド業界の信頼を根本から揺るがす問題行動」とし、「友好的買収者として情報を受領した上で、敵対的に転じたベインの暴挙」などと糾弾している。
【富士ソフト】KKR によるプレスリリースに関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250106546912.pdf
「北海道瓦斯」苫小牧でカーボンニュートラル目指すLNG基地建設へ
東証プライムの北海道瓦斯は、苫小牧地区で新たなLNG(液化天然ガス)基地の建設を検討すると発表した。実質的に温室効果ガスの排出をゼロにするカーボンニュートラルの拠点を目指し、将来的にグリーン水素からつくる「e-メタン」の導入を見据えているという。
メタンはLNGの主成分で、グリーン水素は再生可能エネルギーを使って水を電気分解して作る水素のことをさす。e-メタンはガス業界にとって、脱炭素の決定的な技術とされる。
現在、東京ガスが技術開発に取り組んでいるが、2030年までにガス供給量の1%をe-メタンに置き換えることを目標としており、カーボンニュートラルの実現までには時間がかかりそうだ。
【北海道瓦斯】苫小牧・カーボンニュートラル拠点整備の検討開始について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250106546819.pdf
原価管理で不正か?「工藤建設」調査委員会発足
東証スタンダードで神川県を地盤とする中堅建設会社の工藤建設(横浜市)は、外注費や材料費などで不適切な原価管理が行われていたことを公表し、社内調査委員会を設置することを決めた。
受注した工事の原価を過少計上していたほか、別の工事原価として付け替えようとしていた事案が判明したという。同社の監査室が調べた結果、他にも付け替えの可能性もあり、社内調査委員会で調べることになったという。
委員長はプロアクト法律事務所代表で公認不正検査士の竹内朗弁護士、 委員には社外取締役の平沼義幸・元横浜銀行常勤監査役、社外監査役で公認会計士の水上亮比呂氏、常勤監査役の庄司盛弘氏が就いた。
【工藤建設】社内調査委員会の設置に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250107547253.pdf
「DIC」が「太陽HD」との統合報道を否定
東証プライム上場のインキ大手DICは、プライム上場の配線板用レジストインキの大手、太陽ホールディングス(HD)との経営統合に関する一部の報道について、当社が発表したものではなく、そのような提案を受けた事実はない」とする否定コメントを出した。
世界的に経済ニュースを配信する米ブルームバーグが1月6日夜、太陽HDが同業のDICとの経営統合を検討していることが分かった旨の記事を流した。
ただ、DICは太陽HDの20.1%の株式を保有、役員も出している関係性にある。
【DIC】一部報道について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250107547292.pdf
「兵機海運」同意なきTOB不成立後も買付者は株買い増し
東証スタンダード上場の兵機海運(神戸市)は、筆頭株主の堂島汽船(大阪市、非上場)が昨年12月に株式を買い増し、同12月23日現在、議決権ベースで全株式の10.16%になったことを明らかにした(本誌既報記事一覧)。
なお、同12月16日の段階では7.52%だった。さらに堂島汽船の親会社である富洋海運(大阪市、非上場)も2.11%を持っている。
堂島汽船は兵機海運に対して株式公開買い付け(TOB)を実施。昨年12月5日に終了したものの、兵機海運側は反発し、堂島汽船側はわずか1.24%の取得にとどまっていた。
正体が判然としない買付者によるTOB騒動は今後も続くのか。
【兵機海運】主要株主及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250107547262.pdf
(平日連載、1月8日公表分に続く)
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