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【2024年11月11日「適時開示ピックアップ」】大和重工、西本Wismettac、ツバキ・ナカシマ、ウッドワン、ノジマ、アップガレージ、カヤバ、人・夢・技術グループ

週明け11月11日月曜日の東京株式市場は小幅に続伸した。日経平均株価は先週末から32円高い3万9533円で引けた。先週は、米大統領選でトランプ前大統領の勝利する流れで株価が1400円も値上がりしたが、週が変わって大きな取引材料がなかった。そんな11日の適時開示は、693件となった。この中からコーポレートガバナンスやリスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。

創業190年鋳物メーカー「大和重工」がMBO

東証スタンダードで鋳物メーカーの大和重工(広島市)はMBO(経営陣による買収)に踏み切る。買収するのは、田中宏典社長が代表取締役を務め、全株式を持つ「Tコーポレーション」で、大和重工の株を1株1620円で12月23日まで買い付ける。当然というべきか、大和重工側も賛同している。同社によると、焼成炉などに多額の投資を考えており、短期的には利益水準が下がって株価に影響を与える可能性があるという。このため非上場化して、中長期的な視点で企業価値を向上させるという。

大和重工は天保2(1831)年創業の超老舗で、1961年に東証2部他に上場。創業から190年、上場から60余年。コーポレートガバナンスの観点からも、そして巨額の資金の観点からも、同社は新局面を迎える。

【大和重工】MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241111518468.pdf

老舗食品商社「西本Wismettac」も創業家MBO

東証プライムで食品商社の西本Wismettacホールディングス(にしもとウィズメックHD)も、MBO(経営陣による買収)を実施すると発表した。大和重工と同様、洲崎良朗会長兼CEO(最高経営責任者)が全株式を持って代表を務める「ワイエス商事」が、西本の株式を1株あたり1930円で買い付ける。会社側も賛同し、応募を推奨している。上場廃止を予定している。

西本WismettacHDによると、今後、デジタルやAIを使った物流ネットワークの構築などに多額の投資を予定している。上場を続けていれば、短期的な業績に対してのコミットメントが求められ、株価が下落する可能性があり、MBOを決めたという。

なお、同社は明治45(1912)年の創業で、2023年12月末時点の筆頭株主は洲崎家の資産管理会社の多津巳産業(神戸市)で43.45%を保有、洲崎会長自身も20.27%を保有し、これだけで発行済みの6割強となる。片や66歳の洲崎会長は東大法卒でモルガン銀行東京支店を経て、当時の西本貿易を継いだ経歴の持ち主だ。創業家トップがどのようなガバナンスを構築するか、要注目である。

【西本Wismettacホールディングス】MBO の実施及び応募の推奨に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241111518379.pdf

精密加工「ツバキ・ナカシマ」品質検査の数値を改ざんか

東証プライムで精密加工のツバキ・ナカシマ(大阪市)は、高性能なねじ部品の製造で、不適切な行為があったと発表した。品質検査の一部、測定数値の改ざんがあったことが社内調査で発覚したという。10月に大阪・大江橋法律事務所の畝本毅弁護士を委員長に、西村あさひ法律事務所の平尾覚弁護士、同じく西村あさひの八木浩史弁護士3名で構成する特別調査委員会を設置して調べている。来年1月をメドに報告書を出すとしている。

【ツバキ・ナカシマ】当社のリニア事業における一部製品の品質検査に関する不適切行為について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241108516045.pdf

広島・建材メーカー「ウッドワン」ニュージーランド工場で火災

東証スタンダード上場で建材メーカーのウッドワン(広島・廿日市市)は、ニュージーランドのワイララパ工場で火災があったと発表した。現地時間11月7日午後11時30分頃に出火し、8日午前0時頃に鎮火したという。生産設備の一部に損傷があるものの、けが人はいなかった。出火原因や業績への影響を調べている。

【ウッドワン】ニュージーランド子会社における火災発生のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241111517302.pdf

家電量販店「ノジマ」がVAIOを買収

各種報道の通り、東証プライムで家電量販会社のノジマは、パソコンメーカーのVAIO(長野・安曇野市)を112億円で買収すると発表した。VAIOはソニー製パソコンとして有名になったが、業績が悪化し、投資ファンドの日本産業パートナーズに売却されていた。ノジマは「当社グループの安定的な財務基盤を生かしながら、シナジーを発揮することで純国産PCメーカーとしてVAIOの魅力を国内外のお客様にお届けしたい」とコメントしている。

【ノジマ】VAIO株式会社およびVAIO株式を保有するVJホールディングス3株式会社 の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241111517095.pdf

「アップガレージ」創業者が社員に自社株をプレゼント

東証スタンダードで自動車とバイク用品のリユース専門店、アップガレージグループ(横浜市)は、社員に28500株(時価総額約2600万円)を贈与すると発表した。具体的には、来年2月に創業者、石田誠会長CEOの資産管理会社が無償譲渡する。アップガレージは「長年の間当社の発展・成長に貢献していただいた社員への感謝の気持ちを形にする」などと説明している。同社の有価証券報告書によると、従業員数は197人(2024年3月)となっている。

同社の筆頭株主は石田会長が代表を務める資産管理会社「E&E」で、実に発行済みの72.08%を保有する。ちなみに、石田会長は御年64。創業者が身銭を切る施策で社員の士気はどれだけ向上させられるか。ある種、コーポレートガバナンスの視点からも一考に値する試みである。

【アップガレージグループ】当社創業者資産管理会社所有株式の当社社員への贈与について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241108517004.pdf

「カヤバ」が「知多鋼業」TOBで自動車部品業界で再編

東証プライムで自動車用の油圧機器などを造るカヤバは、自動車用のばねなどを手がけ、名古屋証券取引所に上場する知多鋼業(愛知・春日井市)を170億円で買収する。知多鋼業側も賛同している。来年1月にも株式公開買い付け(TOB)を実施する予定で、知多鋼業は上場廃止になる見通し。完全子会社となってコスト低減などでシナジー効果を出していくという。

【カヤバ】知多鋼業株式会社(証券コード:5993)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241111517139.pdf

不適切な取引で「人・夢・技術グループ」決算発表を延期

東証プライム上場で建設コンサルタントの人・夢・技術グループは、11月14日に予定していた2024年9月期の決算短信の発表を11月26日に延期すると発表した。同社では、協力会社への委託費について不適切な取引があった可能性が浮上し、今年9月から特別調査委員会(委員長=TMI総合法律事務所・田代啓史郎弁護士)が調べている。11月26日にも報告書が提出される見通しという。

【人・夢・技術グループ】2024年9月期決算短信開示の延期ならびに2024年9月期第3四半期決算短信 および2024年9月期決算短信の開示予定日に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241111517902.pdf

(平日連載、2024年11月12日公表分に続く)

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