懲役25年の有罪判決と収監
88年1月、ミンコウとそのほか11名の関係者は恐喝、マネーロンダリング(資金洗浄)、証券詐欺、横領、郵便詐欺、銀行詐欺、脱税の罪でロサンゼルスの裁判所で起訴された。加えて、ミンコウはクレジットカード詐欺の容疑でも起訴される。これらは一個人が犯した投資詐欺としては史上最大規模のもののひとつであり、また「史上最大の会計詐欺」のひとつとも言われている。
ミンコウの裁判は全米で注目を集め、多くの人々が彼の陳述に耳を傾けた。88年12月、裁判官は「前代未聞の規模と巧妙さを持つ詐欺」であるとして57件もの詐欺罪で有罪判決を下し、懲役25年、2600万ドル以上の賠償金を命じた。
牧師への転身と“神に背いた行い”再び
このように刑務所送りとなったミンコウは、獄中でキリスト教に目覚め、キリスト教保守派のリバティ大学の通信プログラムに入学し、学士号を取得する。彼は宗教の教えを通じて自らの過ちと向き合い、新たな人生の道を模索し始めていた。また、刑務所内で多くの書籍を読み、経済犯罪や倫理について学んだという。
収容から約7年が経った95年、ミンコウは模範囚として早期釈放された。出所後、過去の行いを償う姿勢を見せ、自身の体験を共有し、若者に倫理的なビジネスの重要性を伝えようと講演・執筆活動に取り組み始めた。一方で、サンフェルナンド・バレーにある教会で働きながら、神学をさらに学び、修士号を取得した。
そして97年、ミンコウはサンディエゴのコミュニティ・バイブル教会の牧師となった。
「フロードスター」として培ってきた話術と説得力を駆使し、実体験を交え「過去の過ちを乗り越え、神の道に戻った」とドラマチックな説教をし、多くの信者を魅了した。彼の説教は「神の導きによる再生の証」として信者に感銘を与え、教会内での彼の影響力は次第に増していった。
カリスマ的話術と「改心した詐欺師」のブランド化により信者の支持を受け、彼の教会には多くの寄付が寄せられた。ミンコウも教会の発展や詐欺防止活動の推進といった名目で、信者から多額の資金を集めるようになる。
このような改心話は、これまで本シリーズでお届けしたフロードスターのストーリーの終章と方向性は違わない。しかし、ミンコウは懲りてはいなかったのだ――。