今回は、本誌「Governance Q」と公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiners=ACFE、本部=米国テキサス州)の特別連携企画「アメリカ『フロードスター』列伝」第7回「ヘッジファンドトレーダー“損失補填”で嵌まったポンジスキーム」に続く、第8回目。本編で取り上げるフロードスターは、元会社員のクレイグ・スタンランドである。
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【発生年】2012~13年
【被害額】約13万ドル(当時のレートで約1270万円)
【罪種】郵便詐欺
クレイグ・スタンランドは、世界最大のコンピュータネットワーク機器開発会社、シスコシステムズのサービス契約を悪用し、600件近くもの虚偽の故障サービス依頼を行った。
彼は、交換品を依頼して受け取った新しい製品を転売、一方でサードパーティー製品(互換性のある非オリジナル製品)を送り返す、あるいは何も送り返すこともせず、結果、総額13万ドルを詐取。この一連の不正入手と転売は11カ月続くも発覚、逮捕され、24カ月の服役と約83万ドル(約8100万円)の賠償金を科せられた。
本連携企画は、不正対策を使命とする世界的組織ACFEのアメリカ本部の全面協力によるものである。ACFEは日本をはじめ全世界200近い支部で構成され、9万人以上の不正対策分野のエキスパートである会員を擁し、不正防止・早期発見に取り組めるよう、さまざまな教育・支援プログラムを提供している。
その一環で、「フロードスター」と呼ばれる、有罪判決を受けた不正実行者に報酬を支払わない方針でインタビューや講演を行い、カンファレンスやセミナー・ウェビナーなどを介して、不正対策教育プログラムに組み込んでいる。
今回もこれまでと同様のアプローチで、ACFE本部が「フロードスターとの会話」(Conversation with a Fraudster)と銘打ったインタビューをもとに、スタンランドのストーリーをお送りする。
なお、本記事にある「インタビュー」とは、上記インタビューを指す。そして、試みレベルではあるが、1950年代のアメリカの犯罪学者ドナルド・R・クレッシーの提唱した「不正のトライアングル」にも照らし合わせてみた。