【米国「フロードスター」列伝#7】ヘッジファンドトレーダー“損失補填”で嵌まったポンジスキーム

損失隠しの始まり

99年、独立系先物ブローカー会社「ロイド・ルイス」を設立し、03年に商品取引所の会員資格を取得。友人や家族、長年のクライアントから集めた資金は200万ドル(約2億3000万円)だった。

「自分の知識と経験があれば、成功するはずだ」

のちに当時の心境をこう吐露したブランドリーノだが、現実は甘くなかった。彼は最初の1週間で総資金の3%に及ぶ損失を出してしまう。実は、月のうちいずれかの時点で3%の損失を出した場合、取引を停止して翌月から取引を再開する、という契約をしていた。

立ち上げ初月早々に3%の損失を出したとなると、取引停止となり、出資者は資金を引き上げてしまうかもしれない――ブランドリーノの心臓は凍りついた。

取引報告書が顧客の手に渡るまでは約2週間。この間にどうにかしなければならない。ブランドリーノは、同僚と話している時に投資雑誌『インスティテューショナル・インベスター』を何気なくめくった。

そこで、彼は会計ソフトの広告を目にし、ある考えをひらめく。「これを使えば、損失を隠せるかもしれない……」。ブランドリーノは即座にソフトを購入し、損失を改ざんした報告書を作成し出資者に送付した。

エスカレートする不正

ブランドリーノはこれを一過性のものと捉え、「経験ある自分ならすぐに損失は取り戻せる」と信じていた。しかし、損失は5%、10%、20%……と膨れ上がり、抜き差しならぬ状況に陥った彼は、次の不正行為に手を染める。

彼は自らの企業型確定拠出年金(401k)や保険を現金化し、住宅ローンを借り換え、個人資産でファンドが抱える損失を補填。しかし、これは金融法に違反する行為。それでもブランドリーノは「顧客の資金には手をつけていない」と自らを正当化し、不正を続けた。