「踊る大捜査線 THE MOVIE」とコンダクト・リスク【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#2】
「事件は会議室で起きてるんじゃない!」の名台詞
9月末、地上波で放映された1998年公開の劇場版「踊る大捜査線THE MOVIE」を観た。
警視庁の幹部らが会議で吸うたばこの煙が立ちこめるシーンはもはや隔世の感がある。また、刑事役の水野美紀と猟奇殺人者役の小泉今日子が(今でいうとチャットに相当する)ネットでやり取りしたオープンカフェテリア付近の店には、当時、「モンシナイ」というモンブランケーキを販売していて、私自身、リピート購入していたことも懐かしく思い出された。
本題に入ろう。
同映画がヒットしたのは、青島刑事(織田裕二)が、パトカーの通信機を横に構えて、警視庁の幹部に対して発した「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」という名台詞が観客の心に響いたからと言われている。
企業不祥事でも、“現場”でどのような不祥事が起きているかを早期に検知・把握することが最重要事項となる。ただ、企業を取り巻く外部環境の急速な変化は、ステークホルダーの企業に対する期待の変化を通じて企業が直面するリスクにも変容をもたらしているため、あらゆるリスクを事前に想定することは容易なことではない。
特に、近時、法令遵守に焦点を当てた狭義のコンプライアンス概念では捉えきれない不祥事、すなわち、法令や規則等で明示的に禁止されてはいないが、ステークホルダーや市場がそれを知ると、不公正と評価され、企業の信用を著しく毀損する「コンダクト・リスク」違反の事案が続発している。コンダクト・リスクをどのように早期に把握するかは企業価値の維持・存続の観点からも重要課題である。
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