前会長は「配当性向5割の会社に7割超の配当」を提案
そして他の株主の賛同を得るうえで最もハードルが高そうなのが配当だ。フジテック側は2024年3月期の配当予想を75円としているが、内山前会長は最低100円、オアシスがそれ以上を要求したら、そこからさらに10円を上乗せする提案をしていた(後日、上乗せについては撤回)。
会社計画の75円は2023年3月期から据え置き。2022年3月期は70円だったので、2023年3月期は5円の増配だったが、2023年3月期は当期純利益の水準が低かったため、配当性向が52.5%から70.3%にハネ上がってしまった。2024年3月期の予想利益水準で言えば、56.2%とほぼ従前の水準に戻るわけだが、要は、フジテックはそもそも配当性向が5割を超える会社なのである。
一方、内山前会長が主張する100円で計算すると、配当性向は74.9%。金額にすると2023年3月期が総額60億円弱だったのに対し、80億円弱に増える計算だ。一昔前のアクティビストなら普通に要求していた水準だが、近年のアクティビストの多くは、会社の持続的成長を妨げるような配当要求をしなくなっている。他の株主の賛同を得られないからだ。
そんな要求を「アクティビストから会社を、従業員を守るのだ」と言っている創業家出身の内山前会長がすることに、どれほどの説得力があるのだろうか。
何よりも内山氏は、昨年2022年6月の株主総会前にオアシスが自身の特設サイトで晒した“会社私物化”の証拠の数々について、反論らしい反論をしていない。これらが全て虚偽もしくは部分的に切り出して投資家に事実を誤認させるものだということを、証拠を揃えて証明すれば、内山氏が投資家の信頼を回復することも可能だろうが、そうした反証をした痕跡はない。
折しも、議決権行使助言会社の米ISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)が株主提案の取締役選任議案への反対推奨を表明した。日本の投資家はもはや「誰が」言っているのかだけで、株主提案を判断するような地合いではなくなっている。
機関投資家も自身に運用を任せている投資家への説明責任を負っている。来る6月21日の総会での議決権行使結果は、日本の投資家の水準の現在値を占うリトマス試験紙となるはずだ。