オアシスが仕掛けた「ガバナンス・プロパガンダ」の衝撃
2023年2月6日、プレゼンテーション資料が公開される。「フジテックの主張に対するオアシスの反論」と題されたその資料は、94ページに及んだ。前の年に内山家とフジテックの当事者間取引を追及した資料は61ページ、臨時株主総会の株主提案のプレゼン資料は71ページもある詳細なものだったが、それを20ページ以上も上回る、膨大なものだった。
そのなかで、オアシスはフジテックだけとは限らない、まさに日本のコーポレートガバナンスの脆弱さを傷に塩を塗るように反論していった。
社外取締役は、株主の負託を受け、株主に代わって社長ほか執行役をまさに“取り締まる”ことが株主ガバナンスの要諦である。よって、経営とは利益相反のない真に独立した関係が求められていることは言うまでもない。フジテックはオアシスの株主提案による社外取締役候補について、スキルマトリクスを示してその独立性のなさやスキルの脆弱さを示していたが、これに反論したオアシスの主張は恐ろしいものだ。
まずはフジテックの主張を見てみよう。下の図を参照いただきたいが、赤で示されるフジテック側の取締役候補はすべて“独立性あり”と示され、青で示されるオアシス側の候補は2名が“独立性なし”と結論付けている。
「フジテック側が示した社外取締役のスキルマトリクス」
*赤が「会社提案」の社外取締役、青が「株主提案」の社外取締役

ところが、このフジテックの主張にオアシスは返す刀でスキルマトリクスを作成し直し、フジテックの社外取締役には誰一人として独立性がないと言い出したのだ。下の図がオアシスの示したスキルマトリクスだ。
「オアシスがフジテックへの反論のために示した社外取締役のスキルマトリクス」

フジテック側の社外取締役やその候補に独立性がないとするオアシスの主張の根拠は、明快だった。フジテックは、取締役会の諮問機関として役員の選解任を諮る指名・報酬諮問委員会が2021年2月まで設置されていなかった。このためオアシスは、それ以前に就任した取締役の指名プロセスは、当時、決定的な支配力を持っていた内山高一が「主導した」と結論付けたのだ。
そして、「指名・報酬諮問委員会」には社長の岡田隆夫(当時)を委員長に社外取締役の山添茂、同じく杉田伸樹が委員に就いており、彼らこそが「内山氏を守ることに尽力してきた」として、「内山氏の支配を守るために協力すると見られ、真に独立していると見做せません」と指摘した。
オアシスは、コーポレートガバナンスの整備が遅れたことを巧妙に引き合いに出すだけでなく、内山の“非取締役会長”を容認するような取締役会にはガバナンスの実態が伴わないことを見事に論証して見せた。おそらく、ガバナンスの整備を先送りしてきた創業家主導の企業には、明快な反論をするのは難しいだろう。