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【メキシコ弁護士特別寄稿】メキシコ「マネロン防止法改正案」と暗号資産規制の影響《後編》

ミゲル・ガジャルド・ゲラ(Miguel Gallardo Guerra):弁護士(メキシコ在住)
ハビエル・ペレス・モレノ(Javier Pérez Moreno):弁護士(メキシコ在住)

前編に続く

前編に引き続き、メキシコにおける暗号資産の背景とマネーロンダリング防止法(以下AML法)改正案についてお送りいたします。この後編では、メキシコでの事業を展開中あるいは検討中の外国企業が留意すべき点も触れられてます。

国際的背景および比較法的観点

メキシコの本改正案は、金融活動作業部会(以下FATF)が策定した国際的な実務および原則を踏まえて作成されています。これらを法制度に反映させることにより、FATF勧告の遵守水準が向上するとともに、国際関係が強化され、外国企業にとっての投資環境としてのメキシコの魅力も高まることが期待されます。

改正案における注目すべき特徴のひとつは、メキシコのAML法における域外適用既定の明確化です。第17条第16号には、メキシコ国内の利用者にサービスを提供する外国企業については、インフラの設置場所にかかわらず、AML法の適用対象となることが明記されています。

この規定により規制の適用範囲は広がりますが、具体的な事案においては、その域外適用の解釈や管轄権の問題が生じる可能性がある点には留意が必要です。対象となり得る事例としては、メキシコ国内からアクセス可能なウォレットや暗号資産取引所を運営する外国事業者、暗号資産を利用した決済や清算を可能にするテクノロジー企業、あるいは子会社、現地パートナーシップ、リモートアクセス型ビジネスモデルを通じてサービスを提供する外国企業などが挙げられます。

なお、本改正案の趣旨においては、インフラの所在地は考慮されず、当該サービスがメキシコの顧客を対象としているか否かが判断の基準とされます。