パトリック・ティエバール(Patrick Thiébart):弁護士(フランス在住)
ヒンド・ジャラール(Hind Jalal):弁護士(フランス在住)
フランスでの雇用契約終了プロセスは複雑で、法律や手続き、金銭的な面での慎重な対応が求められます。本レポートでは、雇用主が陥りやすい誤りに焦点を当て、法令を順守し、かつ倫理的に責任ある解雇となるよう、実務的なポイントと対策を3回に分けて紹介します。前回のPart 2に続いて、今回はレポート最終回となる第3回目。第6と第7の重大リスクをお送りします。
第6の重大リスク:示談交渉の準備不足
金額・条件の見誤りが、紛争長期化や社内影響を招く
準備不足での交渉は逆効果になる可能性があります。予期せぬ展開を防ぐためにも、戦略的準備が不可欠です。
交渉前におさえておきたい準備ポイント
- 補償額の幅を設定
- 社会保険料も含めた解雇コストをExcelなどで試算
- 金額の上限と下限を決定
- 最低金額は法定または労働協約基準、企業の資力、訴訟リスクに基づいて設定
- 最高金額は職務内容・年次・業界相場などを参考に設定
- 交渉の要因を分析
- 勤続年数が長い従業員は期待額が高くなりがち
- 不当解雇の損害賠償は比較的低額で上限がある
- 過去の和解実績との整合性を保つ
- 従業員の属性を分析
- 労使協議会(Works Council)のメンバーや代表は、当局承認が必須であることから、より高い補償を求められる傾向がある。
- タイミング規則を厳守
- 解雇通知を送る前に示談交渉を行うことは違法となり、その解雇自体が不当と見なされる可能性がある