パトリック・ティエバール(Patrick Thiébart):弁護士(フランス在住)
ヒンド・ジャラール(Hind Jalal):弁護士(フランス在住)
フランスでの雇用契約終了プロセスは複雑で、法律や手続き、金銭的な面での慎重な対応が求められます。現地雇用法の専門家による本レポートでは、雇用主が陥りやすい誤りに焦点を当て、法令を順守し、かつ倫理的に責任ある解雇となるよう、実務的なポイントと対策を3回に分けて紹介します。今回はPart 1に続く、レポートPart 2です。第2から第5の重大リスクをお送りします。
第2の重大リスク:解雇理由の裏付け不足
証拠不十分な手続きは、正当な解雇であっても訴訟リスクを高める
解雇の法的根拠が何であれ、フランス法では、詳細な書面記録と客観的な証拠の整備が求められます。これらが不十分な場合、雇用主は訴訟リスクにさらされることになります。
懲戒解雇における注意点
- 不正行為の種類(単純、重大、極めて重大)を明確に分類する
- メール、目撃証言、社内規定(例:行動規範)などといった証拠を収集する
- 従業員が当該規則を認識していたことを確認・立証する
- 法的根拠がない、「信頼喪失」などの曖昧な理由は避ける
- 従業員の過去の行動や、情状酌量の余地がある事情も考慮する
能力不足による解雇 立証のポイント
- 実現可能かつ測定可能な目標に基づき、業務成績の不良を文書化する
- 改善のための支援および猶予期間を提供していたことを示す
- 会社業務への影響を具体的に示す
- 成績不良が主観ではなく客観的事実に基づいていることを立証する
第3の重大リスク:同一行為に対する重複処分 解雇
一度処分した事案に再度制裁を課すことは、手続の違法化を招く
同一の不正行為に対して二度制裁を科すことはできません。一度懲戒処分(例:警告)を行った場合、同じ行為に対して、後からより重い処分を行うことはできません。
注意すべき点
- 書面での注意(例:メールであっても)は公式な警告と見なされる。
- 解雇の可能性を警告する注意書きは、懲戒処分とされる。