【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#18】UBS、サプラ・エナジー、豪ラメリウス、豪スパルタン、アマゾン、グーグル、メタ、米オキシデンタル・ペトロリアム、米ダウ

UBS、内部告発者への嫌がらせで有罪判決
スイスの金融大手UBSが、顧客の脱税をほう助する社内システムについて告発した2人の内部告発者に心理的な嫌がらせをしたとして、フランスの裁判所から計7万5000ユーロ(約1200万円)の罰金を科された。
AFP通信によると、UBSおよびフランス子会社は2004~12年に大規模な脱税システムを構築。これについて、元内部監査室長と、元マーケティング部長が内部告発していた。
裁判所は、脱税システムの構築については有罪と認定したが、証人に不当な圧力を加えたことと、内部委員会の運営を妨害した疑いに関しては無罪とした。
元内部監査室長の代理人弁護士は、フランスで内部告発者の元雇用主が心理的嫌がらせの罪で有罪判決を受けたのは初めてだとしている。罰金額は「やや少額に見える」が判決には満足していると述べた。
これに対しUBSは、「心理的嫌がらせに対する有罪判決は受け入れられず、不当だと考えている。精査し、次のステップを決定したい」としている。
サプラ・エナジーへの資本注入、マレーシア政府は「救済」説を否定
マレーシアのアンワル・イブラヒム首相はこのほど、政府系特別目的会社(SPV)が油田設備会社サプラ・エナジーに11億リンギ(約368億円)の資本注入を実施することについて、「救済」説を否定した。
サプラへの資本注入をめぐっては、競争力がなく経営難の企業への資本注入は妥当ではないとして、一部議員から批判の声が上がっていた。
アンワル首相はこれに対し、資金はサプラから約2000社の国内の石油・ガス関連企業への支払いに充当されると説明。それら企業の80%はブミプトラ(マレー系と先住民族)系だとし、ブミプトラ優遇政策の一環である面を強調した。
またファミ・ファジル通信相は、資本注入を通じて「サプラの経営陣は交代し、新たなトップの下で持続可能な企業へと変貌すると期待している」述べた。
産金大手の豪ラメリウス、同業スパルタンを買収
豪産金大手ラメリウス・リソーシズと国内同業のスパルタン・リソーシズは、ラメリウスがスパルタンを買収することで合意したと発表した。金相場が上昇基調をたどる中、産金業界では統合再編の動きが広がっている。
ラメリウスはスパルタン株の19.9%をすでに保有しており、残りの全株式も取得する。負債抜きのスパルタンの評価額は24億豪ドル(約2300億円)に設定された。買収により、企業価値が42億豪ドル(約4000億円)規模の産金会社が誕生する。
業界関係者の間では、生産規模の拡大とコスト節減を通じた相乗効果が期待できるとみられている。
【ラメリウス、スパルタン】TRANSFORMATIONAL COMBINATION OF RAMELIUS AND SPARTAN Vision to be a +500koz/pa producer by FY301
米アマゾンやグーグル、原発推進支援へ誓約書に署名
アマゾンやグーグル、フェイスブックを運営するメタなど14の大手企業・団体が、世界の原子力発電の設備容量を2050年までに少なくとも3倍に拡大する目標を後押しする誓約書に署名した。
これは世界原子力協会(WNA)の取り組みで、米テキサス州ヒューストンで開催された、毎年恒例のエネルギー業界の国際会議「CERAウイーク」で発表された。
誓約書には、米石油大手オキシデンタル・ペトロリアム、米化学大手ダウなども署名している。
WNAによると、原子力発電は世界の発電電力総量の約9%を賄っている。世界には原子炉が約440基あるが、稼働中の原子炉は411基にとどまっているという。
今回誓約書に署名したアマゾンなどIT大手3社をはじめ、急成長中の人工知能(AI)分野では大量のエネルギーを必要とするため、テック企業も原発に熱視線を送っている。
【世界原子力協会】Tripling Nuclear Energy Capacity by 2050: Unleashing nuclear’s potential to power data centers, refineries, manufacturing and beyond
https://world-nuclear.org/news-and-media/association-news/ceraweek-event-tripling-nuclear-energy-capacity-by-2050-unleashing-nuclears-potential-to-power-data-centers-refineries-manufacturing-and-beyond
(毎週火曜日連載、次回#19は3月25日公開予定)
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