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【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#13】ステランティス、シンガポール航空、独ルフトハンザ、JFEスチール、印TESI、米シェブロン

ジリ貧のステランティスが経営陣刷新も新CEO選任はこれから

業績不振が続いている欧米自動車大手ステランティスは、昨年末のカルロス・タバレスCEO(最高経営責任者)の前倒し辞任表明に続き、経営陣の交代を発表した。新経営陣は早速、生成AI(人工知能)の仏新興企業との戦略的提携の拡大を決めたが、危機からの脱出への見通しは不透明なままだ。

ステランティスは2021年、欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と仏PSA(旧プジョー・シトロエン・グループ)の統合により発足。星にちなむ社名に違わず、「アルファ ロメオ」「シトロエン」「フィアット」「ジープ」「プジョー」など10以上の有名ブランドを擁しているが、新車販売台数は振るわず、経営危機が深刻化していた。

経営陣交代では、ジョン・エルカン会長が率いる暫定執行委員会が、タバレス氏の後任人事を含めて人選を担っている。

同委員会は声明で、北米事業の責任者であるアントニオ・フィローサ氏が、グローバル最高品質責任者を兼務するとしている。同氏は新CEO候補とされる。

そんな中、ステランティスは仏AI新興企業のミストラルAIと、戦略的パートナーシップの拡大を決定。業界データ分析の加速化を通じ、新製品開発に必要な時間の短縮を図る狙いがある。

ただ、主力市場である米国では販売減の上、投資をめぐり、全米自動車労組(UAW)と対立するなど問題を抱えている。ドナルド・トランプ大統領が打ち出したカナダ、メキシコに対する25%関税の影響も避けられない情勢で、ジリ貧状態に陥っている。

【ステランティス】Stellantis Simplifies Its Organization
https://media.stellantisnorthamerica.com/newsrelease.do?id=26578&mid=1

シンガポール当局、シンガポール航空とルフトハンザの提携拡大を条件付き承認

シンガポール競争委員会(CCS)はこのほど、シンガポール航空(SIA)と独ルフトハンザによるアジア─欧州路線での提携拡大を条件付きで承認した。

CCSは、SIAとルフトハンザからの提携拡大申請を審査。シンガポール-フランクフルト、シンガポールーチューリヒの2路線で競争が阻害される恐れがあると指摘していた。

両社はこれを受け、「2路線での輸送能力を規定レベルで維持する」「2路線でのシンガポールからの乗客数を毎年、最低限にとどめる」「独立監査人に順守状況の監視を依頼する」ことを確約。CCSは、こうした対応を評価し、両社の提携拡大の承認を決めたとしている。

【シンガポール競争委員会】CCCS Grants Conditional Approval for the Proposed Expanded Joint Venture between Singapore Airlines and Deutsche Lufthansa AG After Accepting Commitments
https://www.cccs.gov.sg/media-and-consultation/newsroom/media-releases/conditional-approval-for-the-proposed-expanded-joint-venture-between-sia-and-lufthansa-after-accepting-commitments-31-jan-25

JFEスチール、インドの電磁鋼板メーカーを買収

JFEスチールは、インドの電磁鋼板製造販売会社、ティッセンクルップ・エレクトリカル・スチール・インディア(TESI)を約710億円で買収したと発表した。同国での方向性電磁鋼板の製造・販売の拡大を目指す狙いがある。

買収は、2009年に戦略的包括提携契約を締結した現地の鉄鋼大手JSWスチールとの合弁会社、JSW・JFE・エレクトリカル・スチールを通じて行われた。

TESIは、西部マハラシュトラ州を拠点とし、10年以上にわたって方向性電磁鋼板の製造・販売を手掛けている。

インドでは経済成長に伴う発電・送電需要の増加に伴い、方向性電磁鋼板の需要拡大が見込まれている。JFEは、方向性電磁鋼板の製造から販売までの一貫した体制を早期に確立し、今後の需要拡大に対応していきたいとしている。

【JFEスチール】インドにおける電磁鋼板製造会社の買収完了について
https://www.jfe-steel.co.jp/release/2025/01/250131.html

対ベネズエラ制裁からの「シェブロン除外」にルビオ米国務長官が物言い

米国による経済制裁下にあるベネズエラで操業している石油大手シェブロンが、制裁の適用外になっていることに、マルコ・ルビオ国務長官が異を唱えている。これに対しシェブロンは、仮に同社がベネズエラから撤退すれば中国・ロシア企業の参入を許すことになりかねないと反論し、操業継続に向け米政権に働き掛ける方針だ。

ブルームバーグ通信によると、シェブロンは現在、ベネズエラで操業を続ける唯一の米石油会社で、同国での石油生産量は2024年半ば時点で日量約18万バレル。

ジョー・バイデン政権は22年以降、同社による広範な生産と原油販売を認めているが、同社は米財務省の許認可が短期間であることを理由に、追加資本は投入しない方針を示している。事業の重点は油井・施設の修復と、ベネズエラ国営石油会社からの債権回収に置かれている。

しかし、当時はまだ上院議員だったルビオ氏は1月に開かれた国務長官指名承認の議会公聴会で、ベネズエラで操業しているシェブロンをはじめとする企業から、米国が“敵視”するニコラス・マドゥロ政権に数十億ドルの資金が納められているなどとして、同社に対する許認可を見直す必要があると訴えた。

これを受け、同社のマイク・ワースCEOは2月1日付の英紙「フィナンシャル・タイムズ」のインタビュー記事の中で、ベネズエラではこれまで、西側企業が撤退した後、「中国やロシアの企業が参入し、プレゼンスを高めてきた」経緯があると指摘。米政権に対し、ベネズエラ事業の継続を容認してもらえるよう働き掛けていく考えを示した。

(毎週火曜日連載、次回#14は2月18日公開予定)

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