【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#12】エーザイ、ルノー、日産、ホンダ、仏トタル・エナジーズ、欧STマイクロ、日本製鉄、シンガポール・ハップスチール

EU、エーザイのアルツハイマー薬「レカネマブ」を再評価へ

欧州連合(EU)の欧州医薬品庁(EMA)はこのほど、エーザイと米医薬品大手バイオジェンが開発したアルツハイマーの早期患者向け治療薬「レカネマブ」(一般名・製品名レケンビ)について、昨年11月に承認していたものの、安全性データ評価のやり直しを行う方針を新たに発表した。

EMAのヒト医療製品委員会(CHMP)は昨年11月、レカネマブについて、条件付きでの販売を承認するよう勧告していた。しかし、承認勧告後に入手可能となった安全性に関するデータがあったため、EUの執行機関に当たる欧州委員会が再評価を求めた。

エーザイはこれを受け、「欧州委員会から要請された検討事項は既存の情報で十分かつ明確に対処できる」ものだとし、「CHMPにおいて適切に評価されるものと考えて」いるとしている。再評価は2月中に行われる予定。

ただ、再評価では、レカネマブに関するこれまでの見解が見直される可能性もある。レカネマブは日本や米国、中国では既に販売されているが、EU域内で初めてとなるアルツハイマー薬の導入が、さらに遅れる事態も予想される。

【エーザイ】EU におけるレカネマブの承認審査状況について
https://www.eisai.co.jp/news/2025/news202507.html
【欧州医薬品庁(EMA)】"Update as of 28 January 2025" CHMP opinion
https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/leqembi

ルノー幹部来日、日産株にホンダの「買収プレミアム」上乗せ要求

英紙「フィナンシャル・タイムズ」は1月30日、仏自動車大手ルノーの複数の幹部が同月中に来日し、日産自動車と協議したと報じた。同社とホンダの経営統合に向け、ホンダが日産の経営権を取得する際、日産株への「取得プレミアム」上乗せを勝ち取るよう日産に働きかけたもようだ。

同紙によると、ある消息筋は、ルノー幹部は業績不振の日産に対し、再生に向けて、ホンダとの経営統合をめぐる協議を長引かせないよう要請したと語った。その上で、「規模を比較すれば、予想される統治・生産の統合に関しては実際にはホンダによる日産の経営権取得ということで話をしている」とし、日産株への「取得プレミアム」が上乗せされるような合意内容となることを求めていると述べた。

同紙は、「ルノーは提案について詳細は示していないが、危機に直面している日産の保有株売却を目指しているため、(日産とホンダの)経営統合についてはこれまでオープンだった」と説明している。ルノーとしては、ホンダによる事実上の日産救済の後、できるだけ高値で日産株を売り抜けるのが狙いと見られる。

仏トタル・エナジーズ、STマイクロエレクトロニクスに再生可能電力供給

仏エネルギー大手トタル・エナジーズと欧州の半導体大手STマイクロエレクトロニクスはこのほど、トタルがSTマイクロのフランス国内の製造、販売、研究開発拠点などの施設に、再生可能エネルギー電力(再生可能エネルギーを利用して発電された電力)を供給する契約を締結したと発表した。

契約期間は今年1月から15年間で、トタルはその間に1.5テラワット時の再生可能電力を供給する。

再生可能電力はトタルが操業する風力発電および太陽光発電施設から供給される。両施設の発電容量は計75メガワット。

STマイクロのジェフ・ウェスト執行バイスプレジデントは、「2027年までに事業(スコープ1および2、スコープ3の一部)におけるカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を達成するという目標に向けた重要な一歩となる」としている。同社は、27年までに電源に占める再生可能エネルギーの割合を100%にする目標も掲げている。

【トタル・エナジーズ】Renewable Power: TotalEnergies Will Supply 1.5 TWh to STMicroelectronics in France Over 15 years
https://totalenergies.com/news/press-releases/renewable-power-totalenergies-will-supply-15-twh-stmicroelectronics-france-over

日本製鉄、シンガポールのハップスチールに「グリーンスチール」販売へ

日本製鉄のグループ会社である日鉄物産は、シンガポールの大手鋼材問屋ハップスチールに、日鉄の「グリーンスチール」(生産時の温室効果ガス排出量を削減した鉄鋼製品)の販売を開始すると発表した。

販売するのは「NSカーボレックスニュートラル」と呼ばれる、排出削減量を経済価値化する「マスバランス方式」を適用した日鉄のグリーンスチール。日鉄が実施した削減プロジェクトでの排出削減量を組織内でプールし、その削減量を日本製鉄の任意の製品に配分し、証書とともに供給する鉄鋼製品を指す。

ハップスチールはシンガポール最大級の老舗鋼材問屋で、75年以上の歴史がある。日鉄物産はこれまで約50年にわたり、ハップスチールに鋼材を販売してきた。

今回の取り組みは、「脱炭素社会・環境保全」への貢献を目指す日鉄物産と、「持続可能な鉄鋼流通のフロントランナーを目指す」ハップスチールの双方のビジョンが合致し、実現したとしている。

【日鉄物産】シンガポール最大級の鋼管問屋HUPSTEEL社へ日本製鉄のグリーンスチール「NSCarbolex Neutral」の販売を開始
https://www.nst.nipponsteel.com/news/2024/250130_1408.html

(毎週火曜日連載、次回#13は2月11日公開予定)