QuestHub:企業支配権市場のプロフェッショナルファーム
上場企業を中心に「企業支配権」の争奪が熾烈さを増す昨今。企業価値の向上を達成できない経営者は“追放”の憂き目を見る時代へと移行している。その推進役となっているのが、アクティビスト(物言う株主)であり、「同意なき企業買収」にほかならない。企業支配権をめぐるマーケットが形成されつつある中、同分野で独立系のプロフェッショナルファームとして活躍しているのが、株式会社QuestHub(クエストハブ)だ。そんなQuestHubが、コーポレートガバナンスを中心に最新トレンドを解説する本連載。連載開始の第1回は、東証が掲げる「企業行動規範」の見直しをめぐる動きである。
「少数株主利益」の適切な保護が重要
近年、上場企業のMBO(マネジメント・バイアウト、経営陣買収)が相次いでいる。2023年度は、大正製薬ホールディングス(買い付け総額7100億円)や、ベネッセホールディングス(同2700億円)など、名だたる大手企業のMBOが公表され、金額ベースでも計1.4兆円と過去最大となった。
また、同年の伊藤忠商事による伊藤忠テクノソリューションズの完全子会社化など、親会社が子会社を買収する形で親子上場を解消するケースも多い。アクティビスト(物言う株主)をはじめとする機関投資家のエンゲージメントが活発化し、また政府や東京証券取引所が推進してきた“コーポレートガバナンス改革”が浸透したことで、多くの企業で「上場の意義」が問い直されるようになった。
このような状況の中で、東証が「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」の中で目下検討を進めているのが、企業行動規範の見直しだ。
【日本取引所グループ】企業行動規範ページ
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/code-of-conduct/index.html
企業行動規範とは、上場企業に対して責任ある行動を求めるルールとして、東証が2007年に策定したものだ。このうち、「遵守すべき事項」に区分される規範については、違反すれば公表措置など一定のペナルティの対象となるほか、改善が見られなければ上場廃止にもなり得る。
フォローアップ会議の議論を主導する上場部企画グループ統括課長の池田直隆氏は、「MBOや支配株主による完全子会社化などの非公開化は増加トレンドにある」と話す。
「市場と向き合い、経営効率を考えた結果であり、そうした経営判断自体は当然ながら尊重されるべきものであるが、退出の際には少数株主の利益が適切に確保されることが極めて重要。企業行動規範を見直す形で追加的な手当てを検討している」(池田氏)
MBOの場合、本来、売り手である少数株主の利益のために行動すべき主体である経営陣が、少数株主から自社株式を安く買いたいというインセンティブを持つ買い手となることで、少数株主にとって十分な価格や条件でない買収が成立してしまう可能性がある。また、支配株主による完全子会社化のケースでも同様の問題を孕む。