90億円回収できず現地子会社が債務超過に
東証プライム上場で鉛のシェアトップの東邦亜鉛(東京・港区)は6月13日、豪州にある連結子会社CBH Resources Ltd.(CBH)を通じて保有していたAbra Mining Pty Ltd(Abra=アブラ)の株式を譲渡し、豪州資源事業から完全に撤退したことを発表した。
東邦亜鉛が豪州に進出したのは2003年。その16年後の19年にCBHを通じて西オーストラリア州にあるアブラ鉛鉱山開発のため、同鉱山の開発権益を100%持つ資源大手のGalena Mining Limited(Galena)と開発事業参画の正式締結を結んだ。
19年から始まったプロジェクトは、GBHが鉱山開発の事業体であるAbraの第三者割当増資を9000万豪ドルで引き受け、22年にGalenaが60%、CBHが40%のAbra株を保有するジョイントベンチャーが誕生した。
23年1月11日にはアブラ鉱山の選鉱プラント操業試運転が開始したというリリースが出され、そこには〈2023年1月中にも鉛精鉱の生産を開始し、2023年第1四半期の出荷予定を目指すことと致します〉と記載されていたのだが……。
ところがその1年3カ月後の24年4月5日、同社はAbraが豪州会社法に基づく任意管理手続開始を決議したと発表。Abraに対する出資金や保証、精鉱を購入するために前払いした原料前渡金など約90億6700万円が取立不能か、取立遅延になると公表したのだ。
アブラ鉱山は22年12月までは計画通り建設開発工事を終えたが、23年に入り採掘数量が当初の計画を下回ったことや、天候不順による輸送障害を受けて資金繰りが悪化していたことが大きな理由とされた。