損保各社の報告書の中身とは…
三井住友海上「評価基準・考課運営を見直し」
MS&AD傘下の三井住友海上は、各業務改善命令に対応した取り組みを開示している。第一に〈適正な競争環境の構築に向けて〉と題し、独禁法などの法令等に関するルール整備や社員・代理店教育に加えて、政策保有株式、いわゆる持ち合い株式にも言及。30年3月末に上場企業の政策株式の「保有ゼロ」を目指して、投資先企業からの全株売却の了解を取り付けるよう働きかけているという。
また、〈適正な営業推進態勢・保険引受管理態勢の確立に向けて〉として、不適切な行為のインセンティブにならないよう、保険料収入における目標値(収保目標)など、評価基準や考課運営を見直しているという。
そして、ビジネスモデルの変革に向けた取り組みを実施。過度なトップライン偏重からの脱却をはじめ、本業支援・出向基準の見直しなど、従来のビジネス慣行や行動様式を見直し「お客さま本位」の追求を掲げ、法令等遵守の徹底とガバナンス態勢の強化を図っていくとしている。
あいおいニッセイ同和「同業他社との懇親は原則禁止」
同じくMS&AD傘下のあいおいニッセイ同和損保も、内容的にはグループの三井住友海上と重複する部分はあるものの、書式なども含めて少々異なっている。入社式の様子や、経営層と現場社員との座談会を、写真付きで報告している。
また、同業他社との接触については、損保会社のみでの懇親は開催・参加ともに原則禁止するなどのルールを策定しているという。25年4月に社内で自主点検を実施して、適切に運営していることを確認したとしている。
さらに、三井住友海上と同じく掲げる〈適正な営業推進態勢及び保険引受管理態勢の確立〉の具体的施策としては、営業店評価・表彰について、全国統一基準での組織表彰制度を解消。〈地域・部支店が独自で取組項目を設定し、褒め合う運営へと変更した〉という。
損保ジャパン「企業文化の変革」を強調
一方、損保ジャパンは30ページに及ぶパワーポイント形式の資料。図表やグラフ、写真など、ビジュアルを多用した構成になっており、社外部の人間でも読みやすいものとなっている。
まず、一連の金融庁処分について、《企業文化》《経営管理態勢》《損害保険業界の構造的問題》の3つの視点から「真因」を抽出。企業文化の項目では、現場のモラルとリスクオーナーシップの不足や、自己保身・上意下達、縦割り・他責思考などと記載されている。経営管理態勢では、経営陣のリスク認識の甘さと内部統制の不備など。そして業界の構造的問題のひとつとして、政策保有株式による競争環境の歪みが挙げられている。
中でも企業文化の変革の施策には多くの紙幅が費やされている。
リスクオーナーシップ(自分ごと化)の取り組みとして、コンプライアンス研修を実施していることなどに加えて、「SOMPOのYes」なるキャンペーンを策定。これまで法令等に違反していないものの、顧客や世間との常識と乖離があった点、自社都合に偏っていた点を鑑み、社員が自分の行動や判断について、顧客や社会、家族・友人に堂々と説明できるかどうか内省することを求める内容だ。
また、《風化させない仕組み・リスク認識の醸成》として、24年11月から「伝承室~教訓から学ぶ~」なる見学施設を設けているといい、黒を基調とした贖罪意識を喚起するようなイメージの場内写真も掲載。設置当時は報道も相次ぎ、今年25年5月までに累計約4700人が訪れたという。公開はグループ社員のみだが、一連の事態を事ほど左様に重く受け止めているということのようだ。
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不祥事が相次いだ大手損保各社。コーポレートガバナンスが機能するよう、全社挙げて自社を見直す状況が続いている。