24年8月、東京地裁は東洋経済側に損害賠償の支払いと記事の削除を命じる判決を下す。当時の報道によると、請求額2200万円に対し、ニデックと永守氏個人に合計605万円の賠償を認める判決で、ニデック側は「勝訴判決を得た」と発表。東洋経済側は控訴したものの、今年25年1月には東京高裁はこれを棄却、東洋経済側はまたも敗訴することになった。
ただ、東洋経済に対する訴訟はこれだけではないのだ。
元従業員による“営業秘密”漏洩をめぐる訴訟
23年6月、ニデックは別の記事で「不正競争防止法違反及び不法行為による損害賠償請求」として東洋経済新報社、東洋経済オンライン編集長、編集部記者およびフリー記者、そして元従業員を訴えている。
しかも提訴を公表した23年6月28日のリリースでは、被告各人について“実名”まで記載。ちなみに、東洋経済、ダイヤモンドともにこれまでの提訴発表のリリースでは、被告個人は肩書だけの記載だった。
対象になったのは、提訴から4カ月以上前の同年2月10日の記事。ニデックの巨額買収を批判した内容で、編集部側が入手したという内部資料である「社内稟議書」が写真付きで報じられている。このことにニデックが強く反応したようだ。
というのも、内部資料は被告となった元従業員が不正に取得した営業秘密であり、東洋経済側はニデックから〈「記事にしようとしている情報が不正取得された営業秘密である」旨の警告を受けながら、それを無視して、その営業秘密の一部を記事に記載〉(23年6月28日リリース)したとして、不正競争防止法違反、民法上の不法行為に該当すると主張している。
そのうえで、ニデックは〈不法、不正な行為に対しては、断固闘うべきと考え、民事訴訟を提起するとともに刑事告訴を行うことといたしました〉。
リリース等を確認する限り、現時点でこの訴訟の判決は出ておらず、いまだ終結していないようだが、元従業員による営業秘密漏洩の問題が核心にあり、これまでの名誉毀損を争う裁判とは様相を異にしていると言える。
なお、ニデックはこの裁判のみならず、東洋経済、ダイヤモンドの訴訟においては民事だけでなく、所轄の警察署に告訴状を提出するなど、刑事告訴を行っていることも併せて公表している。