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クオンタムソリューションズ「証取委600万課徴金勧告」のガバナンス事情【6月10日「適時開示」ピックアップ】

会長の元官房長官、河村建夫氏も5月に退任

クオンタムSは24年4月19日に〈当社を取り巻く環境の変化に対応し、機動的で迅速な経営判断及び、経営体制の一段の強化を図るため〉として、社長だったマーク・ピンク氏が5月30日の定時株主総会で退任し、現在のフランシス・ビンロン・ジョー氏が社長に就任することを発表した。

ところが、その半年後に同社は意外な事実を公表する。

24年10月10日のリリース〈当社に対する訴訟の提起と取下げに関するお知らせ〉によると、前社長のピンク氏は原告である個人から〈個人的な金銭貸借契約〉をめぐって取立金の請求を受けていたという。そしてそれに関連してクオンタムSは、ピンク氏の社長退任発表前の24年4月10日にさいたま地方裁判所からの通知書を受け取っていた。内容は24年3月~5月分のピンク氏の役員報酬、合計約241万円に対する「債権差押命令」。

リリースによれば、ピンク氏はさいたま地裁からの通知書を社内で受け取ったにもかかわらず、他の経営陣に報告しなかったため、本来、原告に支払うべき役員報酬がピンク氏に支払われていたという。

クオンタムSがその事実を知ったのは、ピンク氏が株主総会で正式に退任した後の24年6月28日、原告から同社が訴訟提起を受けたことだった。同社は当該金額を原告に支払い7月30日には訴訟が取り下げられて終了。同時にピンク氏にも事実確認を行い、8月7日に全額返金されたとしている。

クオンタムSはこの件に関して〈提訴の訴訟物の価額が適時開示基準を超えていたにもかかわらず、本件の開示が遅れたことをお詫び申し上げます〉と謝っている。

ちなみに、ピンク氏退任と同時に発表されたのは代表取締役会長に河村建夫氏が就任するという人事。河村氏といえば、自民党で数々の要職に就き、03年の小泉内閣で文部科学大臣を務めたのち、08年の麻生内閣では官房長官に任命された大物議員。ただ、21年に政界を引退していた。

引退後の22年11月から1年間、クオンタムSのコンサルタント業務に携わっていたというが、その河村氏もさる5月29日、「一身上の都合」を理由に会長職を辞任している。

18:20【クオンタムS】証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告について
https://www.quantum-s.co.jp/jp/detail?id=1771