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クオンタムソリューションズ「証取委600万課徴金勧告」のガバナンス事情【6月10日「適時開示」ピックアップ】

タイで走ることなく日本で終了したEV事業

東証スタンダード上場でシステム開発やまつげサロンを運営するクオンタムソリューションズ(クオンタムS、東京・千代田区)は6月10日、証券取引等監視委員会から600万円の課徴金納付勧告を受けたことを発表した。課徴金の対象となったのは、2022年8月の第2四半期と同年11月の第3四半期の有価証券報告書。

〈金融庁から正式な通知を受領次第、対応について検討いたしますが、特段の事情がない限り事実および納付すべき課徴金の額を認める方針であり、決定次第改めてお知らせいたします〉とコメントを出している。

本誌既報のとおり、クオンタムSは24年11月15日にEV(電気自動車)事業から撤退することをリリースしていたが、今回の課徴金勧告はこのEV事業によるものだ。

11月15日のリリースで同社は、EV事業終了と撤退した理由について、資本・業務提携を結んでいたFOMM(未上場、横浜市)とタイでEV約300台の販売委託契約を結んでいたが、部品の納期遅延や従業員の突然の退職などを理由に生産計画が繰り返し延期されたことや、納品・販売に関しても277台分の車両や車両代金が支払われていないことを挙げ、FOMMに対して前渡金3500万香港ドル(約7億円=当時換算)と、貸付金2500万円、金利および売掛金31万香港ドル(約600万円=同)の返還を求めるとしていた。

監視委の指摘はこのEV事業における取引で、クオンタムSがFOMMにEVを製造するための必要な資金を送金した際に「前渡金」として連結財務諸表に計上していたものの、その後、FOMMがEVを製造できなくなったことを認識していたにもかかわらず、「前渡金」のまま計上していたことが不正な会計処理に当たるというもの。

クオンタムS側も〈前渡金相当額を金銭債権(長期立替金)として計上した上で、回収可能性を検討し、取引先によるEVの製造・販売が見込まれる部分を除き、貸倒引当金を計上すべきであった〉としている。

ところで、クオンタムSは先の24年11月15日のリリースで、FOMMに対して同社による前渡金が他の債務の支払いに使用された疑いや、新車種開発を目的とした会社を設立していることなどを〈重大な契約違反〉として〈FOMM社に対して法的措置も含めた対応を検討〉しているとしていたが、現時点で法的措置をとったのかは確認できない。

ところで、クオンタムSにおいて訴訟に関連した事案はこればかりではないようだ。