6月9日の日経平均株価は前日比346円高の3万8088円で取引を終えた。そんな9日の適時開示は165件だった。
6月総会開催目前の日本産業推進機構によるTOB発表
東証スタンダード上場で学習塾「第一ゼミナール」などを展開するウィザス(大阪市)について、日系投資ファンドの日本産業推進機構(NSSK)は6月9日、TOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。なお、ウィザスもTOBに賛同、株主に対して応募を推奨した。
TOB価格は1株当たり3237円で、6月9日終値2743円に対し18%のプレミアムが付いた価格設定。期間は本日6月10日から7月22日、決済の開始日は7月30日となっている。
ウィザスでは、2023年から同社株の取得を進めてきたシンガポールの投資ファンド、グローバル・ESG・ストラテジー(GES)および、その運営会社であるスイスアジア・フィナンシャル・サービシズ(SAFS)と対立関係を深めていた。
GESは、特に創業家「堀川家」に対する過剰な配慮を問題視。現経営陣は買収防衛策の導入も含め、「番頭経営」に堕しているとして、今年6月の定時株主総会においても取締役の刷新や買収防衛策の撤廃などを求める株主提案を行っていた。
【Governance Q】東京コスモス電機、ウィザス、日邦産業「株主総会」物言う株主対応の“三社三様”
https://cgq.jp/series/jpx/8331/
ガバナンス不全の元凶とされた「創業家」
ところが、NSSKによるTOB発表を受けて、SAFSも同じ6月9日に応募契約を締結した旨のリリースを配信。昨年末には日本経済新聞で、SAFSがウィザスに対して非公開化を求めていることが報じられており、リリースでも今回のTOBによって、これまで大株主として主張してきた内容が実現されたとしている。
なお、上記の株主提案も撤回される。ちなみに、GESのリリースによると、当初、TOB価格は3207円で内諾されていたというが、SAFS側の協議を経て、3237円と30円引き上げられたという。
一方、ウィザスのコーポレートガバナンス不全の元凶とされた堀川家も、NSSKのTOBに賛同している。創業者で相談役の堀川一晃氏(保有割合2.42%)をはじめ、資産管理会社(同7.15%)、一晃氏の長男で執行役員を務める堀川直人氏(5.13%)らの20%超の保有分もTOBに応募される。SAFS側の保有分と合わせて、これで40%弱が確保されていることになる。
今回のTOBには約300億円が投じられるというが、SAFS、創業家双方にとって、無難な形で“イグジット”ができたということか。TOB発表を受け、6月10日、ウィザスの株価は急騰。3237円のTOB価格にサヤ寄せする形で、13時過ぎ現在、3225円を付けている。
15:30【ウィザス】株式会社NSSK-J1による株式会社ウィザス(証券コード:9696)の株券等に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9696/tdnet/2636511/00.pdf