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オルツ「粉飾疑惑」報道で8月“ガバナンス再構築”臨時株主総会の行方

社外取締役1人、社外監査役2人のガバナンス体制

今さらながら、オルツは現社長の米倉千貴氏(48)が2014年に設立、昨年10月に東証グロースにIPOしたばかりのAIスタートアップ企業。上場以前からキーエンスやTOPPANホールディングスとの資本業務提携を発表するなど、投資家の関心を集めていた。しかしその実、20年12月期以降、売上高を急拡大させる一方で、赤字が続いていた。

同社が公表している決算資料によると、20年12月期5500万円だった売上高は21年12月期9億5500万円、22年12月期26億6600万円、23年12月期41億1100万円、そして上場後の初決算となる24年12月期は60億5700万円まで大きく拡大。その一方で最終損益では20年12月期から一貫して赤字を計上。上場前の23年12月期は約15億円、24年12月期は約26億円の赤字に沈んでいた。

臨時株主総会でガバナンスを強化すべく取締役を追加で選任するとしているが、監査役会設置会社のオルツの経営陣は取締役3人、監査役3人の合計6人。執行は社長の米倉氏と、21年入社のCFO(最高財務責任者)の日置友輔氏(34)が担い、常勤監査役には14年入社で17~21年まで取締役を務めた中野誠二氏(66)が就いている。

社外役員に目を転じると、美容・健康器具のMTGグループ傘下のコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)であるMTG Ventures代表の藤田豪氏(50)が19年5月から社外取締役を務める。また、社外監査役は2人で、公認会計士の福島泰三氏(55)が17年3月から、牛島総合法律事務所パートナー弁護士の藤井雅樹氏(51)が22年3月から就任している。

大株主のベンチャーキャピタルも離反

オルツの24年12月末時点の上位10位株主の状況は以下の通りだが、大株主が同社株を処分する事態も相次いでいる。

米倉千貴社長 17.29%
Vertex Growth Fund II Pte. Ltd.  7.80%
ジャフコSV4共有投資事業有限責任組合 7.04%
日本カストディ銀行(信託口) 5.93%
SBI Ventures Two株式会社 3.97%
SBI AI&Blockchain投資事業有限責任組合 3.17%
SMBCベンチャーキャピタル6号投資事業有限責任組合 2.38%
Dawn Capital1号投資事業有限責任組合 2.38%
イーストベンチャーズ2号投資事業有限責任組合 2.05%
SMBC日興証券株式会社 1.92%

2位のVertex Growthはシンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングス傘下のファンドで、オルツは22年6月、同ファンドがリード投資家として第三者割当増資で35億円の資金調達を実施したとリリースしていた。ところが、Vertex Growthは第三者委設置発表後の5月1日、市場外で2.90%、市場内で4.56%の合計7.46%を売却し持ち分をゼロとした。

また、5位のSBI Ventures Twoと6位のSBI AI&BlockchainはSBIホールディングス系だが、SBIインベストメントも5月に入ってからたびたび変更報告書を提出している。5月12日提出の変更報告書における共同保有割合は8.50%だったが、15日提出分では8.66%に微増したものの、22日提出分で7.16%に減少、28日提出分では5.82%となり、直近の30日提出分では4.11%と半減した格好だ。

そんな中、本日6月5日付朝刊で朝日新聞が「粉飾」の疑いを報じ、他紙でも同様の報道が続いている。これに対し、オルツは10時に《本日の一部報道について》と題し、第三者委員会の調査中で、会社としては具体的な事実関係を把握しているものではないとの声明を出した。

グロース上場からわずか半年余りで浮上した粉飾疑惑で、監査法人や主幹事証券の責任を問う声も出ている。8月の臨時株主総会でガバナンスを再構築するまで、果たして時間的猶予は残されているのか。

なお、6月5日14時半時点での株価は前日比2円安の99円となっている。

17:00【オルツ】臨時株主総会招集のための基準⽇設定に関するお知らせ
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS82078/02ab41df/4b46/4a64/803b/a662d0d90831/140120250602578388.pdf