東証スタンダード上場のマンションデベロッパー、ゴールドクレストは5月30日、株主から同社監査役に対し、責任追及等の訴えを提起するよう請求する書面を同月23日に受け取っていたことを発表した。
相手は旧村上ファンド出身「丸木強氏」のファンド
ゴールドクレストの同日付リリースによると、請求を起こしたのは2位株主のストラテジックキャピタル(SC)。社長の安川秀俊氏がゴールドクレスト取締役会の承認を得ることなく、安川氏が〈事実上主宰する会社〉を通じて分譲マンション開発を行ったことがゴールドクレストの事業と競合し、競業避止義務違反に当たるという内容で、総額20億7084万円の損害賠償を求めている。
SC側もそれに先立つ5月29日に同じ内容のリリースを公開。そのリリースによると、安川氏個人が間接的に発行済み株式数の100%を保有していた「株式会社佐藤秀」(後述)をして、ゴールドクレストと競業する取引を行ったとし、下記の書面を同社に送付したという。
〈会社法356条1項の規定により、安川秀俊氏が第三者(佐藤秀)のために当社(編集部注:ゴールドクレストのこと)の「事業の部類に属する取引」を行う場合、当社取締役会による競業取引の承認がなされることを要するが、安川秀俊氏は取締役会の承認を得ることなく、佐藤秀をして分譲マンションを建設及び販売する取引、すなわち「事業の部類に属する取引」を行った。従って、安川秀俊氏は当社取締役としての競業避止義務に違反していることから、安川秀俊氏は当社に対して損害賠償義務を負う。……以下略……〉
周知のとおり、SCは旧村上ファンドの創業メンバー、丸木強氏が率いるアクティビスト(物言う株主)として知られる。今年1月27日には13.1%(当時)の株式を保有するゴールドクレストに対して特集サイトを開設、いわゆる「キャンペーン」を開始していた。
1月時点ですでにSC側は、安川氏が会社法に反する行為によって不正に利益を得た可能性があると判断。昨年9月から株主代表訴訟を検討するため、取締役会議事録と会計帳簿の閲覧謄写を請求し、これをもって「司法手続き」をスタートさせていた。
今回の安川氏に対する提訴請求はこの司法手続きを受けてのもの。ただ、SCが安川氏を提訴しているわけではなく、SCが株主としてゴールドクレストの監査役に対し、安川氏を提訴するよう請求する格好となっている。
ちなみに、ゴールドクレストの監査役は、元五洋建設副社長の津田映氏が常勤監査役を務め、東京国税局を振り出しにあずさ監査法人で代表社員を務めた公認会計士の尾関純氏、警視庁出身の押切浩氏の3名から成る。
これまでのキャンペーンをたどると、SCが創業社長である安川氏の「ゴールドクレスト支配」の構図を突いていることが分かる。