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大成建設「札幌高層ビル建て直し」で社員がインサイダー課徴金勧告【5月30日「適時開示」ピックアップ】

前営業日5月30日金曜日の日経平均株価は反落し、前日29日比467円安の3万7965円で取引を終えた。そんな5月30日の適時開示は386件だった。

“舞台”は札幌の大型複合ビル「建て直し」

東証プライム上場のスーパーゼネコン、大成建設は5月30日、同社社員4名がインサイダー取引をしたとして金融証券取引法(金商法)違反の疑いで、証券取引等監視委員会が課徴金を納付するよう金融庁に勧告したことを発表した。

今回、大成建設社員らのインサイダー取引嫌疑の“舞台”となったのは、同社が北海道・札幌市で建設中だったNTT都市開発発注の26階建ての高層ビル工事。しかし2023年3月、大成建設は同ビルをめぐって、鉄骨の組み立て作業において精度不良が発生していたとして、建て替え工事を実施することを発表する。

当時の発表資料や報道などを総合すると、高層ビルは北海道放送(HBC)本社跡地で、北海道庁の旧本庁舎「赤レンガ庁舎」に面した好立地の再開発案件。上層階に米ハイアット系のホテルが入居し、中層階はオフィス、低層階は商業施設という大型複合ビルだ。

ところが、大成建設側は躯体について現場レベルで実測値などを改竄、実際とは異なる数値を発注者側などに報告していたという。施主であるNTT都市開発が検証した結果、そのままでは契約に基づいた品質、建築関連法規などを満たせない見込みとなることから、ビルの再構築を決断。15階まで建設が進んでいたにもかかわらず、地上部分の全体と地下の一部を撤去して建築し直すことになった。

これを受けて、当初24年2月を予定していた竣工は26年6月頃まで延期となり、大成建設は23年3月期に約240億円の特別損失を計上。役員2名が辞任する事態にまで発展し、当時、業界関係者からは「スーパーゼネコンでは考えにくい失態」と言われた一大不祥事案だった。