株主提案の不適格性を強調する東京コスモス
GESは常勤の取締役候補として、GESの運用者である先述のSAFSの最高投資責任者、門田泰人氏の選任を提案している。
東京コスモスは〈GESの運用の責任者としての立場にあると思われる〉この門田氏について、短期的な株価上昇に依拠した経営戦略となる懸念とともに、重要な機密情報がGESに流出し〈インサイダー取引防止を含む利益相反の観点から著しく不適切〉と取締役選任に強く反発しているのである。
そしてさらに、東京コスモスはリリースで門田氏の選任について反対理由を縷々列記していく。《過去在籍していたファンドの投機的行動》と題し、門田氏が運用会社のアスリード・キャピタル在籍時代に手掛けた富士興産(東証スタンダード上場)対するTOB(株式公開買い付け)を途中で撤回したことを挙げているが、これもそのひとつだ。
21年4月、アスリードにTOBを仕掛けられた富士興産は買収防衛策の導入と併せて、TOB期間の延長を求めたが、アスリードはこれを拒否。結果、富士興産の防衛策発動に発展。これに対しアスリードは東京地裁に差し止め請求の仮処分命令を求めたものの、買収目的の説明が不十分で、TOB期間の延長も拒否したことなどを理由に、アスリード側の請求が裁判所から棄却された経緯がリリースには綴られている。
東京コスモスは、富士興産の事案は〈ファンド固有の短期的な利益追求を図っていたことを端的に示すもの〉で、〈かかる一連の取引等を主導していたのが門田氏です〉とリリースで締め括っている。
このほかにも、《提案者株主が安定的な株主とは言えないこと》という項目も設けている。その中でGESの運用元のSAFSによる東京コスモス株式の買い進めが信用取引によって行われていることを挙げて、以下のように結ぶ。
〈当社の経営を目指す株主でありながら、その資金源が不明瞭なだけではなく、信用取引の多様さから判断しますと、中長期的に当社経営にコミットする株主とは言えないだけではなく、その多くの株式が担保になっている状況から発行会社としても、非常に不安定な株主であるとの印象を禁じえません。〉
リリースはまだ終わらない。
さらに東京コスモスは《SAFSのマネーロンダリング規制違反及びシンガポール通貨庁からの追徴金支払命令》なる一節を設け、同庁サイトに昨年5月7日付で掲載された記事の参考和訳までリリースに載せているのだ。
*
このように手を変え品を変え、GESおよびSAFSの問題点を突こうとする東京コスモスの反対リリース。本レポートでは主張の是非について立ち入らないが、攻める株主側と守る会社側、攻守がそれぞれに自らの主張の正当性を繰り広げている以上、その内容はどうしてもポジショントークになってしまうのは否めない。
ところが、この6月の株主総会でGESから株主提案を受けている上場企業は東京コスモスだけではないのである。
(後編につづく)