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アクティビスト株主提案に「猛烈反対」の適時開示:東京コスモス電機vs.シンガポールファンドの場合

3月期決算企業の株主総会を来月6月に控え、株主提案を受けた上場企業の「取締役会意見」が相次いで公表されている。

フジ・メディア・ホールディングス(フジHD)が、大株主の米投資ファンド、ダルトン・インベストメンツからの株主提案に反対表明するなど、攻防が激しさを増しているのは周知のとおり。もっぱら一般的な関心はフジHDなどの大型銘柄に集まりがちだが、ダルトンのようなアクティビスト(物言う株主)の株主提案に対して、依然、反対する企業がほとんどだ。

そんな中、ファンドなど提案者の素性や素行にまで踏み込んで反対姿勢を鮮明に打ち出す企業もあるようだ。東証スタンダード上場の電子部品メーカー、東京コスモス電機(神奈川・座間市)もそのうちの1社である。

シンガポールファンドが「取締役の総入れ替え」を要求

東京コスモスは5月21日、4月に受け取っていた大株主2社からの株主提案について、取締役会の反対を正式表明した。そのうちのひとつがシンガポールの投資ファンド、グローバル・ESG・ストラテジー(GES)からの株主提案だった。

【東京コスモス電機】Global ESG Strategyからの株主提案に対する当社取締役会の意見に関するお知らせ
https://www.tocos-j.co.jp/tocos-j-wp/wp-content/uploads/2025/05/ir20250521-2.pdf

GESは2023年より東京コスモスへの投資を開始し、GESを運営する投資運用会社のスイスアジア・フィナンシャル・サービシズ(SAFS、シンガポール拠点)全体で現在、約27%を保有しているという。なお、「アクティビスト」を自称する投資家は少ないが、これまでの関連報道を総合するに、GESはアクティビストというべき投資ファンドである。

そのGESが今年6月の株主総会で取締役5人の選任を求めているのだ。

東京コスモスの定款では、監査等委員を除く取締役は8人以内と定めており、過半数を超え、うち3人は常勤取締役の選任を求めている。当然ながら、岩崎美樹社長以下、現在の業務執行取締役4人全員の再任も拒否しており、事実上、GESが東京コスモスの経営権取得を目指す提案内容と言える。

GESは昨年の総会でも株主提案を行っているが、内容は余剰金の処分や定款の一部変更にとどまり、取締役人事に関する提案は行っていなかった(GESの株主提案はいずれも否決された)。

ここにきて昨年よりも提案内容を格段に強めたわけだが、GESは5月20日、一般向けに東京コスモスの株主提案に関するプレスリリースを配信している。

そこでは〈岩崎社長に株価についての見解を尋ねる度に、「市場が決めるものなので分からない」等と答え、具体的な見解や株価を高めるための方針を示したことは一度もありませんでした〉などと現経営陣の無策ぶりを強調。成長戦略の不在、成長投資・株主還元の不実行、後継者計画の不存在が東京コスモスの課題であるとし、現経営陣には解決が〈期待できないことは明らか〉と主張している。

その主張の是非は置くとして、当の東京コスモス側はGESの株主提案に真っ向から反対。

5月21日の東京コスモスのリリースによると、EGSはこれまでにIR(投資家向け広報)面談と称して接触してきたものの、その興味関心は〈ネットキャッシュその他の財務面〉に尽きており、製造業である同社の事業に対する関心は窺えなかった。そして、〈短期的な利益獲得を目的とする提案に外ならないと思料します〉としている。

そのうえで、5人のEGS側の取締役選任議案の中でも、1人の候補に特に頑強に抵抗しているのだ。