クシム、暗号資産「フィスココイン」の評価額をめぐって調査報告書を受領【4月4日「適時開示」ピックアップ】

東証スタンダード上場で暗号資産取引所「Zaif(ザイフ)」を傘下に持つクシムは4月4日、保有暗号資産等の評価額の過年度訂正をめぐって設置した調査委員会から調査結果報告書を受領したことを発表した。

(開示事項の経過)社内調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250401506780.pdf

流動性が低い「暗号資産」をどう評価するか

問題になっていたのは、2023年10月期におけるクシム保有の暗号資産「フィスココイン」の評価額に関して。同年10月、クシムはM&A(合併・買収)によって大量のフィスココインを受け入れた経緯があり、同社は当時、その保有分を8億円と評価していた。

ただ、同コインの流動性は低いにもかかわらず、24年10月期第2四半期(昨年4月末時点)まで評価額を“備忘価額”(実質的な価値のなくなった資産に付ける便宜上の金額。通常、1円、10円などとキリの良い僅少な金額を計上する)に引き下げることをしていなかった。そのため、外部機関から不正確な会計処理が行われていた可能性を指摘されていた。

そして、その適正を問うために調査委を立ち上げた格好。要は、評価減のタイミングは適切だったのかを調査することが目的の委員会ということだ。

調査委の委員長は本澤順子弁護士(本澤法律事務所)、委員は小黒健三公認会計士(やまとパートナーズ)、北川泰裕弁護士(虎門中央法律事務所)の2名が務めた。報告書では、日弁連の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン(日弁連ガイドライン)」に準拠して利害関係のない委員を選任したとしているが、あくまでも委員会は〈任意で発足〉(同リリース)したものである。

リリースは「仮代表取締役」名義

そもそも、クシムは保有するフィスココインの評価額を23年11月に同社の傘下となった暗号資産取引所「Zaif」での“市場価格”をもとにしていた。ところが調査委は、同コインは流通量が低迷しており、その価格は公正な時価とは言えなかったとしたうえで、23年10月期決算時点で保有するフィスココインについて〈ゼロ又は備忘価格まで評価減を実施すべきだったと言わざるを得ない〉と報告している。

なお、報告書は、クシムが〈違法・不正な会計を行った疑いがあるとして調査が開始された訳ではないため、本委員会としては不正調査を行っておらず、再発防止策の提言なども行っていない〉と締め括られており、要約版はA4判6ページのものだった。

一方、リリースは「仮代表取締役」の大月雅弘弁護士の名義となっている通り、本来は定時株主総会が開かれる1月末時点で任期切れとなっていた取締役がさる4月1日に一斉退任し、大月氏ら仮役員が裁判所によって選任されたばかり。

その背景には株主で前取締役の田原弘貴氏と、中川博貴前会長と伊藤大介前社長らの間で“内紛”が発生していることがある。近く臨時株主総会の開催が想定されており、クシムの経営自体の行方にも注目が集まるところだ。