検索
主なテーマ一覧

【2025年2月10日「適時開示ピックアップ」】MTG、CLホールディングス、小林製薬、一蔵、ホリイフードサービス

連休の合間となった2月10日月曜日の東京株式市場は反発した。日経平均株価の終値は前日から14円値上がりし、3万8801円で引けた。前日7日の米国株の値上がりを好感したと見られるが、ほかに大きな取引材料がなく、7日を下回る時間帯もあった。そんな2月10日の適時開示は、686件。これらの中から、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ。周辺情報も交えて紹介する。

美容機器「MTG」子会社の“不適切契約”で調査報告書を公表

東証グロース上場で健康美容機器のMTG(名古屋市)は、広告業務を請け負う子会社M`sエージェンシーの不適切な取引について、特別調査委員会(委員長=矢田悠弁護士・ひふみ総合法律事務所パートナー)がまとめた調査報告書を公表した(本誌既報)。

グループの規定ではM`sは、MTGの依頼に基づいての広告を発注する決まりになっていた。ところが、 同社社長(2024年12月19日に解任)は21年7月、地方のテレビ局からCM出稿の提案を受け、独断で広告枠を発注したという。その後も同様の発注を繰り返していたとしている。

同社長は「優良な広告枠の確保には適時の判断が必要だった」と弁解しており、報告書でも「個人的な利益を図っていたという事実は見当たらない」としている。ただ、M`sは広告料を支払うことができずに取引先への延滞が発生し、問題が発覚した。

24年9月期だけで15億円ほどの影響があると見られている。報告書では、広告業界の商慣習として広告の発注には必ずしも社印等で押印された発注書が求められず、口頭やメールで発注されることが珍しくなかったという。

とはいえ、今回の不適切契約はかなりの金額に上る。テレビ業界には古い慣行が残っているということか。

【MTG】特別調査委員会による調査報告書開示に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250210567635.pdf

販促企画「CLHD」元役員らによる“競業行為”で賠償を認める判決

企業向け販促グッズの企画制作を行う東証スタンダード上場のCLホールディングス(HD、東京・港区)は、元執行役員の競業行為に関する訴訟で、CLHDが求めた損害賠償が認められたと発表した。

CLHDによると、2021年6月、執行役員(当時)と従業員22人が一斉に退職した。この退職について同社が調べたところ、顧客に関する営業秘密などを利用する労働契約法の競業避止義務違反に違反するとして、損害賠償と競業行為の差し止めを求めて提訴していた。

東京地裁は1月22日、この元執行役員らに2900万円の支払いを命じる判決を出した。差止請求については却下したという。なお、CLHDは「賠償額の算定など、当社の主張が十分に認められなかった点がある」として控訴した。

転職が一般化する中、リスクマネジメント上も、この種の問題が増加する可能性がある。

【CLホールディングス】訴訟の判決に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250210568115.pdf

「小林製薬」が慶應医学部副学部長を社外取に

東証プライムの小林製薬(大阪市)は、新たに慶應義塾大学医学部副学部長の門川俊明氏を社外取締役の候補に選出したと発表した。門川氏は日本腎臓学会理事も務める。3月の定時株主総会に提案する予定。

3月の定時総会ではこのほか、執行役員の松嶋雄司氏(研究開発本部長)を取締役に昇格させる予定で、専門的な観点からの監督機能強化を図るとしている。

ただ、小林製薬の社外取締役にはこれまでも、経済産業省の「伊藤レポート」で知られる伊藤邦雄・一橋大学名誉教授、テレビ東京ホールディングスなどの社外取を務める佐々木かをり氏(イー・ウーマン社長)などの“著名人”が名を連ね、コーポレートガバナンスの先進企業と見られてきた。

一方、今回のリリースでは取締役会のメンバーに医薬・医療分野の専門家を入れたことをアピールしているが、羊頭狗肉にならないことが求められる。

【小林製薬】新たな取締役会を構成する取締役候補者の内定に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250210567582.pdf

着物販売「一蔵」が沖縄ウエディング事業から撤退

東証スタンダード上場で着物の販売・レンタルの一蔵(さいたま市)は、沖縄・名護市で計画していたリゾートウエディング事業から撤退すると発表した。

新型コロナウイルス禍で業績が悪化し、さらに、ここにきて建設費用が高止まりしたためとしている。確保していた土地は売却する。

現状、コロナ禍は一服した感があるが、いまだその余波に晒されているということか。

【一蔵】沖縄リゾートウエディング事業の開業断念並びに固定資産の譲渡に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250206565301.pdf

外食チェーン「ホリイフードサービス」食中毒で営業停止処分

東証スタンダードのホリイフードサービス(茨城・水戸市)は、関東や東北で運営する居酒屋「忍家」の上尾駅東口店(埼玉県)でノロウィルス感染による食中毒事故が発生したと発表した。

埼玉県は2月10日から3日間、同店を営業停止処分にした。県の発表によると、2月4日に同店で食事をした42人に食中毒症状があったという。

ホリイフードはリリースで社員教育を徹底してきたことを強調しながらも、「お客様の信頼を裏切ることになった」と陳謝している。

【ホリイフードサービス】ノロウィルスによる食中毒事故発生に関するお詫びとお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250210568733.pdf

(平日連載、2月12日公表分に続く

ランキング記事

ピックアップ

  1. 【米国「フロードスター」列伝#8】世界企業「シスコ」を騙して“13万ドル不正転売男”の虚飾と末路…

    今回は、本誌「Governance Q」と公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiner…

  2. 【2025年2月20日「適時開示ピックアップ」】ジェノバ、グンゼ、オウケイウェイヴ、MTG…

    2月20日木曜日の東京株式市場は続落した。日経平均株価は前日から486円値下がりし、3万8678円で引けた。為替相場で円高ドル安が進行し、売…

  3. ゲーム会社vs.アクティビスト「経営者の業績連動報酬」は企業価値創造のインセンティブとなるか【遠藤元…

    遠藤元一:弁護士(東京霞ヶ関法律事務所) ストラテジックキャピタルのガンホーに対する「公開アクティビスト活動」 スマートフォンゲーム「パズル…

  4. フジテレビ問題は対岸の火事ではない〜「人のふり見て我がふり直せ」は経営者の法的な義務である〜【野村彩…

    野村 彩:弁護士(和田倉門法律事務所)、公認不正検査士(CFE) 会社から“雇用”でなく“委任”されているのが取締役 文春砲に端を発したテレ…

  5. 【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#14】豪エナジー・トランジション・ミネラルズ、P2Xソリューシ…

    豪資源開発会社、トランプ発言受けグリーンランドでの規制緩和に期待 オーストラリア資源開発会社エナジー・トランジション・ミネラルズ(ETM、旧…

  6. 【米国「フロードスター」列伝#7】ヘッジファンドトレーダー“損失補填”で嵌まったポンジスキーム…

    本誌「Governance Q」と公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiners=AC…

あなたにおすすめ

【PR】内部通報サービスDQヘルプライン
【PR】日本公認不正検査士協会 ACFE
【PR】DQ反社チェックサービス