【2025年1月28日「適時開示ピックアップ」】ゴールドクレスト、日本ビジネスシステムズ、牧野フライス、ニデック、ガーラ
1月27日の東京株式市場は続落した。日経平均株価は前日から366円値下がりし、3万9565円で終えた。米国株の値下がりが響いた。そんな27日の適時開示は183件。これらの中から、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ。周辺情報も交えて紹介する。
マンション開発「ゴールドクレスト」社長の“利益相反行為”を否定
東証スタンダードでマンション開発のゴールドクレスト(GC、東京・千代田区)は、安川秀俊社長に利益相反行為があったという“報道”を否定するコメントを出した。
リリースでは同報道は明確に示されていないが、プレスリリース配信サイト「PR TIMES」によると、丸木強氏率いるアクティビスト(物言う株主)ファンドのストラテジックキャピタル(SC)が安川社長の利益相反行為をめぐり、司法手続きを開始したというSC発信のリリースがアップされている。
SCのリリースによると、安川社長は GCの大株主でもあり、かつ、個人でマンション開発会社も所有している。このため、川崎のマンション開発をめぐり、SCはこの2社を絡ませた安川社長の利益相反行為があったとして株主代表訴訟を検討しているという。
SCは現在13%強のGC株を所有しており、大株主の立場から、同社のコーポレートガバナンス機能が不全になっていると指摘。安川社長に利益相反の可能性があることを広くGCの少数株主に共有するために「特集サイト」(https://stracap.jp/8871-GOLDCREST/)を開設したとしている。
GCは〈当社は法令等に基づいて適切な対応をしており、利益相反行為による不自然な取引を行い、安川が不正に利益を得た事実はございません〉と全面的に否定している。
なお、1961年生まれの安川社長は東大工学部卒業後、リクルートに入社。92年に独立してGCを設立した創業トップ。一方、GCの筆頭株主はミューアセット(東京・千代田区)の47.42%で、3位株主にはエスディサポートの8.12%、そして安川社長自身は3.12%を保有する6位株主となっている(いずれも2024年9月末現在)。
創業社長とアクティビストの戦い――。コーポレートガバナンスの視点からも大いに注目される。
【ゴールドクレスト】当社に関する一部報道について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250128556618.pdf
クラウド「日本ビジネスシステムズ」専務が“取引先社員に誹謗中傷”で辞任
東証スタンダード上場でクラウドサービスなどを手掛ける日本ビジネスシステムズ(JBS)は、後藤行正・取締役専務執行役員に対して辞任勧告を決議したと発表した。後藤専務も勧告に応じて28日に辞任した。
リリースによると、後藤氏は取引先企業から「社員に対する不適切な言動があった」との通報を受け、JBS側で調べた結果、誹謗中傷行為をしたことを確認したという。〈取締役を含むJBSグループ従業員に対するコンプライアンス教育の強化等〉を図るとしている。
なお、同社をめぐっては昨年12月、タックスヘイブン(租税回避地)のケイマン諸島籍の株主から「株主総会検査役」の選任を申し立てられるなどの事態が発生している(本誌既報)。
【日本ビジネスシステムズ】取締役1名に対する辞任勧告の決議および取締役の異動(辞任)に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250128556089.pdf
「牧野フライス」が事前協議のないTOB「ニデック」で質問状
東証プライムの牧野フライス製作所は1月28日、株式公開買い付け(TOB)の意向を示す東証プライムのニデックに対し、質問状を送ったと発表した。
質問状では、ニデックが考える製品やサービスに関するシナジー効果や、取引先や牧野フライスの従業員などにメリットについて尋ねている。また、事前協議なしでTOBの手続きに踏み切った詳細な理由を求めている。
これに対し、ニデックも28日、TOB手続きの一環として、牧野フライスに株主名簿の閲覧と謄写(コピー)を求めたことを公表した。 同問題は本誌「Governance Q」でも報じているが、両社のさや当てから目が離せない状況だ。
【牧野フライス製作所】ニデック株式会社に対する「質問状」の送付に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250128556088.pdf
【ニデック】株式会社牧野フライス製作所(証券コード:6135)に対する 株主名簿の閲覧・謄写等請求書の提出について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250128555981.pdf
オンラインゲーム「ガーラ」ソフトウエア開発費で課徴金の納付命令
東証スタンダード上場でオンラインゲームのガーラ(東京・渋谷区)は、証券取引等監視委員会の課徴金納付命令の勧告が出たと発表した。監視委は金融庁に対し、6495万円の納付命令を出すことを求めている(本誌既報)。
監視委は、ガーラが費用に入れるべきソフトウエアの開発費を資産として計上したことに対し、「不適切な会計処理」と判断し、勧告にふみ踏み切った。 現在の会計制度では、研究開発費で原則、費用計上するが、一部価値のあるものついては資産として取り扱うことできる。
【ガーラ】証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告についてのお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250128556530.pdf
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