【2025年1月23日「適時開示ピックアップ」】フジHD、デサント、伊藤忠、サクシード、花王
1月23日木曜日の東京株式市場は4日続伸となった。日経平均株価は前日比で312円高の3万9958円でひけた。前日と同様、米国株の値上がりや、米国でAI(人工知能)に取り組むソフトバンクグループが買われ、日経平均を押し上げ、4万円を上回る場面もあった。そんな23日の適時開示はちょうど100件。これらの中から、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ。周辺情報も交えて紹介する。
「フジHD」が一転、「日弁連ガイドライン第三者委」設置へ
1月23日に引退を発表した元タレントの中居正広氏が起こした女性とのトラブルに関し、東証プライム上場のフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)は同日、臨時の取締役会を開き、第三者委員会を設置して原因の分析や再発防止策に当たると発表した。日本弁護士連合会のガイドラインに沿った形で進めるとしている。
委員長は公認不正検査士の竹内朗弁護士(プロアクト法律事務所)。委員には五味祐子弁護士(国広総合法律事務所)と寺田昌弘弁護士(三浦法律事務所)の2人が選ばれた。委員長の竹内氏は日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)理事を務め、先般の東京女子医科大学の第三者委でも副委員長を務めた弁護士だ。
竹内氏は「視聴者の皆様、スポンサーの皆様、お取引先の皆様、 株主・投資家の皆様、そして従業員の皆様が抱かれている疑問や懸念に対し、説明責任を明確に果たせるよう調査に努めて参ります」とコメント。事前に委員長が談話を出すことは異例だ。
調査は①本事案におけるフジHD、およびフジテレビの関わり、②類似する事案の有無、③フジHDとフジテレビの事後対応、④内部統制や人権への取り組みなど6項目。
この問題をめぐっては、フジHDの大株主である米投資ファンドのダルトン・インベストメンツが1月21日付で同社に対し、今回の騒動は収束しそうにないと指摘したうえで、下記のような2回目の書簡を送っている。
〈この問題に対する責任は、貴社の取締役会にあります。ようやく社外取締役から臨時取締役会の開催要請があり、1月23日に開催される予定であると聞いています。そこでは、日弁連ガイドラインに従って適切に構成された第三者委員会の設置が要求されるものと思われます。私たちは、この要求に従うよう強く求めます。注視しているのは私たちだけではありません〉
【フジ・メディア・ホールディングス】第三者委員会の設置について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250123554288.pdf
「デサント」が「伊藤忠」の完全子会社として再出発
東証プライムのデサントは1月24日をもって上場廃止になると発表した。伊藤忠商事の完全子会社となって再出発する。
伊藤忠とデサントとは昨年、TOB(株式公開買い付け)の価格をめぐって激しい応酬があり、最終的に1株4350円にまで上昇した経緯がある。
伊藤忠はこれまでもTOBなどでデサントへの出資比率を引き上げてきたが、6年前にはデサントが力を注ぐ韓国事業をめぐり、週刊誌などでも両社経営陣の確執も話題となった。
今後の伊藤忠の販売網を使って海外展開を強化するが、企業風土的にも異なりそうな両社だけに、その結果に注目が集まる。
【デサント】当社株式の上場廃止に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250123554104.pdf
教育・人材派遣「サクシード」教育現場でAIの活用強化へ
東証グロース上場で教育・福祉の現場に人材を紹介したり、派遣したりするサービスを展開するサクシード(東京・新宿区)は、子ども向けのオンラインの学習を提供するみんがく(東京・目黒区、非上場)を4月に子会社化すると発表した。
みんがくは生成AI(人工知能)を使った学習の仕組みづくりに力を注いでおり、両社が協力して人材とAIで教育の質を高めていくという。教育など、さまざまな現場でのDXの活用は不可欠のようだ。
【サクシード】株式会社みんがくの株式の取得及び第三者割当増資引受による子会社化に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250123554291.pdf
「花王」アクティビストのオアシスから株主提案
東証プライムの花王は、投資ファンドのオアシス・マネジメントから3月下旬に開催する定時株主総会での株主提案を受け取ったと発表した。
内容は、社外取締役5人の選任、社外取締役に対する報酬改定、社外取締役に対する事後交付型株式報酬付与などを求めるもので、詳細は明らかになっていないが、オアシスは昨年から花王のマーケティング戦略がガバナンスの改善を訴えおり、今後、攻勢を強める可能性がある。
【花王】株主提案に関する書面受領のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250123554281.pdf
(平日連載、1月24日公表分に続く)
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