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【2025年1月17日「適時開示ピックアップ」】 ニデック、牧野フライス、フジHD、伊藤ハム久米HD、ユニ・チャームグローバルスタイル

1月17日の東京株式市場は反落した。日経平均株価の終値は前日比121円安の3万8451円で引けた。前日の米国株の値下がりが響いた。そんな17日の適時開示は195件。これらの中から、コーポレート・ガバナンスコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ。周辺情報も交えて紹介する。

「ニデック」vs.「牧野フライス」TOBの是非で応酬

東証プライムのニデックは、TOB(株式公開買い付け)の対象としている東証プライム上場の牧野フライス製作所(東京・目黒区)が示した要望書について、〈誤った認識が多数含まれている〉とする反論する書面を提出したと発表した(本誌既報)。

ニデックは事前の協議や打診をせずに牧野フライスに突如TOBを仕掛けたものの、ターゲットとされた牧野フライス側は1月15日、〈わが国及び米国における通常のプラクティスを逸脱した不誠実な手法〉との見解を公表。

これに対し、ニデックは〈(米国の)きわめて著名な事例に限っても、少なくなく見受けられる〉と反論し、〈(牧野フライスは)不十分な情報から「不誠実な手法」と判断している〉などと指摘。そのうえで、公正・中立の観点で検討するよう要請した。

牧野フライスは15日、ニデックはTOBの開始を4月4日に設定したことに対しても〈3月期決算の発表もあって検討時間の確保ができない〉と訴えている。これに関してもニデックは、年度末から期末決算の発表日までの間にTOBが行われることは全く珍しいものではないと強調し、〈十分な検討を行うための時間的余裕を与えないようにする意図は一切ございません〉と弁明している。

両社の見解はすれ違ったようで、今後、牧野フライスが今後、どのように出るかも注目される。日本のTOB実務において、一石を投じそうな状況と言えよう。

【ニデック】株式会社牧野フライス製作所(証券コード:6135)の特別委員会からの要望書につきまして
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250117552416.pdf

「フジHD」が子会社フジテレビに“中居正広問題”で人権方針での対応を要請

タレントの中居正広氏と女性とのトラブルをめぐり、東証プライム上場のフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)は、子会社のフジテレビジョンに対し、グループ人権方針に基づき、客観性をもって事実の調査と検証を行うよう要請したと発表した。

各種報道の通り、フジテレビは同問題について、第三者である弁護士を中心とする調査委員会が調査・検証し検証結果を公表するとしている。しかし、調査委は日弁連(日本弁護士連合会)のガイドラインに基づいたものではないとしており、批判が出ている。

一方、フジHDは1月14付書簡で、関連会社との合算で7%超を保有する大株主で米ダルトン・インベストメンツから第三者委員会の設置を求められている。なお、ダルトンはアクティビスト(物言う株主)として知られる投資ファンドだ。

ちなみに、フジテレビが港浩一社長らの記者会見を開いたのは1月17日金曜日の15時、片やフジHDが本リリースを出したのは同日の17時32分。事前にフジテレビ側に要請は行っていたのだろうが、同グループの人権意識の一端を垣間見せる“時差”と言えば、言い過ぎか。

目下、スポンサーの降板が相次いでいるが、フジHDの大株主の状況(2024年9月末時点)を見ると、第2位株主は東宝(8.71%)、第4位は文化放送(3.66%)、第5位はNTTドコモ(3.61%)、第7位は系列の関西テレビ放送(2.88%)、そして第10位はヤクルト本社(1.86%)となっている。これら株主の動きも要注目だ。

【フジ・メディア・ホールディングス】当社子会社に関する報道及び「グループ人権方針」の徹底について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250117552422.pdf

「伊藤ハム久米HD」監査等委員会への移行発表も“利点”が不明

東証プライムの伊藤ハム米久ホールディングス(HD)は、今年6月の株主総会で、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行することを発表した。

これまでも取締役会における社外取締役の割合を半数とするなど、経営の透明性の確保とコーポレートガバナンス体制の強化を図ってきたという同社。今回、〈監査等委員を取締役会のメンバーにすることで取締役会の監督機能をより強化し、経営の透明性と客観性をさらに高める〉と説明する。

そのうえで、意思決定・業務執行のさらなる迅速化を図り、取締役会は中長期の経営戦略や重要度の高い経営課題を重点的に議論していくというが、伊藤ハム米久HDのリリースでは、監査役設置会社の利点については触れられていなかった。

【伊藤ハム米久ホールディングス】監査等委員会設置会社への移行に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250116551956.pdf

「ユニ・チャーム」が品川女子学院に自社株譲渡

東証プライムのユニ・チャームは、品川女子学院(東京・品川区)に対し、第三者割合方式で自社株を譲渡すると発表した。

品川女子学院は中高一貫校で、広末涼子の卒業校としても知られるが、今年で創立100年を迎える。今後は起業マインドを持つ女性を育てる方針で、ユニ・チャームはこれに賛同したという。

1株1円で65万株を割り当て、信託を設定し、配当を品川女子学院に交付するとしているが、数多ある女子学校から同学院が選ばれた特別な理由はリリースからは読み取れなかった。

【ユニ・チャーム】学校法人品川女子学院の活動に対する賛助を通じたSDGsへの貢献を目的とした第三者割当による自己株式の処分に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250117552363.pdf

紳士服「グローバルスタイル」が従業員に株式譲渡

東証スタンダードでオーダースーツ店を展開するグローバルスタイル(大阪市)は、従業員を対象に、譲渡制限付株式制度を導入すると発表した。社員が経営参画意識を高めることを目的としている。

なお、割り当てる株数は今後決めるとしているが、新たに発行したり、譲渡したりする株は全体の希釈化率を考慮して判断する。ちなみに、グローバススタイルの従業員は267人(2024年7月時点)。

この数年、従業員に対する株式を無償譲渡する上場企業が増えている。3~5年間は売却できないケースが多く、中には退職時まで持ち続けてもらう会社も少なくない。

【グローバルスタイル】当社の従業員に対する譲渡制限付株式制度の導入に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250114550072.pdf

(平日連載、1月20日公表分に続く

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