【2025年1月14日「適時開示ピックアップ」】 サカイHD、イオンFS、MIXI、SCREENHD、パルグループHD、JSB
3連休明けの1月14日火曜日の東京株式市場は4日続落となった。日経平均株価の終値は、前日から716円値下がりし、3万8474円で引けた。20日に就任式を控えたトランプ米大統領の経済政策に対する警戒心が市場で強まっているようだ。そんな14日の適時開示はいつもより多い680件。
これらの中から、コーポレート・ガバナンスコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ。周辺情報も交えて紹介する。
この日は、マネーロンダリング(資金洗浄)への不十分な対応で退任を迫られた経営トップほか、支配的な株主の影響力を排除するという企業もあった。また、創業者への慰労金も話題になりそうだ。
「サカイHD」退職慰労金“不服”の元役員を損害賠償で反訴
東証スタンダード上場で太陽光発電事業などを営むサカイホールディングス(HD、名古屋市)は、1月14日付で元役員に対して反訴し、1245万円の損害賠償を請求したと発表した。
元役員は昨年6月、役員の退職慰労金を不服として提訴。サカイHDは正当である旨を主張し係争中。
今回、損害倍書の提訴については、元役員が私的な費用をサカイHDに負担させており、忠実義務違反、善管注意義務違反に当たるとしている。退職慰労金を火種に、新たな疑惑が噴出したということか。
【サカイホールディングス】反訴の提起に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250114550757.pdf
イオン銀行“改善命令”で「イオンFS」社長が解職
東証プライム上場のイオンフィナンシャルサービス(イオンFS)は、藤田健二社長の辞任の申し出を受理したうえで解職について決議したと発表した。会長の白川俊介氏を代表取締役に選定した。
イオンFSの連結子会社、イオン銀行が昨年12月26日、マネーロンダリング対策の不備をめぐって金融庁から業務改善命令を受けたことに対し、経営責任を明確にしたと説明している。
【イオンフィナンシャルサービス】代表取締役及び取締役の異動(辞任及び選定)に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250114550660.pdf
「MIXI」子会社の“不適切な資金やり取り”で社長報酬を減額
東証プライム上場でスマートフォンゲームなどを手掛けるMIXIは、「内部統制は有効」とした過去の内部統制報告書について、「開示すべき重要な不備がある」に訂正した。
連結子会社、チャリ・ロトの役職員が取引先と不適切な資金のやり取りをしていたと判断した。 不適切な資金のやり取りは約10億円に上るという。訂正した内部統制報告書は2022年3月期~24年3月期。
CEO(最高経営責任者)の木村弘毅社長は責任を取って基本報酬の30%を3カ月減額する。
【MIXI】財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備及び 内部統制報告書の訂正報告書の提出に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250114550199.pdf
半導体製造装置「SCREENHD」の売り上げで不適切会計
東証プライムで、半導体製造装置のSCREENホールディングス(HD、京都市)は、不明朗な会計手続きについて調べていた特別調査委員会の報告書を公表した。
半導体製造装置をめぐる収益認識の時期について、相手先への据え付け作業を終えてから売り上げ計上すべきところを、相手側の都合もあって装置を引き渡した時点で売り上げにするなどした会計手続きが不適切だったという。
あずさ監査法人から指摘があって発覚した。同社は、業務プロセスの周知不足などが原因としている。
【SCREENホールディングス 】特別調査委員会の調査報告書公表に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250110549685.pdf
「パルグループHD」退任の創業者に31億円の功労金
東証プライムでアパレルブランドを展開するパルグループホールディングス(HD、大阪市)は、2025年5月28日付で取締役を退任する創業者の井上英隆氏(89)に31億円の特別功労金を支給すると発表した。この支出は25年2月期決算で特別損失として処理するという。
井上氏は1973年にスコッチ洋服店からカジュアルファッション部門を分離独立させて株式会社パルを設立。以来、代表取締役として50年以上の長きにわたり経営を担ってきた。「チャオパニックティピー」や雑貨「3コインズ」を展開するパルグループは、いまや24年2月期の連結売上高が1925億円で、従業員7000人にまで発展。「その功績と在任中の労に報いるため」としている。
創業者への功労金では、22年にもタクシー大手の第一交通産業(北九州市)創業者で100歳になった黒土始氏(23年4月に死去)に16億円を支払った。
さらに昨年にはダイキン工業が会長を退任する井上礼之氏(89)に対し、「特別功績金」として43億円を支払ったことに注目が話題に。ちなみに、井上氏は現在も同社の名誉会長に加え、グローバルグループ代表執行役員を務める。中興の祖とはいえ、創業者でない井上氏だが、代表執行役員を離れる際は再びの慰労金が支払われるのだろうか……。
【パルグループホールディングス】創業者への特別功労金の支給に伴う特別損失の発生に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250110549565.pdf
学生マンション「JSB」支配的株主の影響力を排除へ
東証プライム上場で、家族の同伴など不適切な旅費の支出や、簿外の金券の存在が発覚した学生向けマンションのジェイ・エス・ビー(JSB、京都市)は、特別調査委員会の提言を受け、具体的な再発防止策を発表した。
前面に掲げたのは「支配的株主との間の雇用関係の解消」。 オーナー企業の意識があるとして、これを払拭する。
2024年12月の臨時取締役会で、支配的株主が「相談役」を退任する決議を行い、実際に12月31日で相談役を退任したという。今後も、緊張感ある経営を行うためにも、支配的株主の影響力低減に向けた取り組みを検討し、この株主とも協議していくとしている。
同社のコーポレート・ガバナンス報告書によると、元代表取締役社長の岡靖子氏が筆頭株主(全体の34%)で、相談役に就いている。
特別調査委の報告書では、 専務取締役が中心となって家族らを連れ、18件で約1700万円の旅費を使っていたことが問題視されている。同専務は、かつての代表取締役と、宿泊を伴う出張には家族同伴を可能とする旨の約束を交わしていたと述べていることも記されている。
【ジェイ・エス・ビー】再発防止策の策定に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250114550706.pdf
(平日連載、1月15日公表分に続く)
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