【2024年12月27日~25年1月5日「適時開示ピックアップ」】川崎重工、サイバー・バズ、ニデック、牧野フライス、LINEヤフー、力の源HD
2024年12月30日の大納会の日経平均株価は3万9894円で引けた。前年の大納会に比べて6430円(19%)の値上がりで、年末の株価としてはバブル期の1989年以来、35年ぶりに最高値を更新した。そんな年末年始(12月27日~25年1月5日)までの適時開示は合計248件(12月27日197件、28日2件、29日0件、30日49件、12月31日~1月5日0件)。この中からコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。
海上自衛隊の癒着で「川崎重工」が調査報告書公表
東証プライムの川崎重⼯業は12月27日、海上自衛隊の潜水艦修理に関する架空取引の疑惑を調べていた特別調査委員会の中間報告を公表した。
川重は2024年6月、潜水艦修繕事案を対象とした上記特別委を組成、委員長には関西企業法務界で著名な北浜法律事務所の渡辺徹弁護⼠、ともに同事務所所属の児玉実史、谷明典両弁護士が委員を務めていた。
報告書によると、神戸造船所修繕部の従業員が潜⽔艦乗組員から要望を受け、整備作業に物品を購⼊して乗組員に提供。これらの購⼊代金には、川重と別の取引先との架空取引でプールした資⾦が使われていた。
さらに、これらの架空発注でつくった“裏⾦”を使い、飲⾷費やビール券代に充てていたほか、乗組員や従業員の私物も購⼊していたという。問題発覚のきっかけは、大阪国税局の税務調査だった。
そして、報告書には川重社員の証言も記されている。
「防衛省からは多額の受注を受けている以上、少額なら問題ないと思っていた」「要望品のリストを受け取り、乗員要望品を調達するという流れについて、違和感があったが、これを行うのが慣例だという雰囲気があった」……
これらの不正は約 40 年前から行われてきたという。2018年度から23年度までの架空発注の金額は17億円に上った。
川重はこの日、発注と納品のチェック体制の強化や内部通報制度の強化など再発防止策も打ち出した。
【川崎重⼯業】(開⽰事項の経過)潜⽔艦修繕事業に関する特別調査委員会の 調査結果(中間報告)と当社グループの対応について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241227545651.pdf
【川崎重⼯業】(開⽰事項の経過)役員の処分について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241227545665.pdf
マーケ支援「サイバー・バズ」が“船井電機破産”で内部統制の重要不備露呈
東証グロース上場で、SNSを使ったマーケティング支援事業を展開するサイバー・バズは12月27日、内部統制で開示すべき重要な不備があったと発表した(2024年10月に本誌既報)。
同社では、約22億円の売掛債権の回収ができない可能性が強まり、貸倒引当金を計上した。この取引先は脱毛サロンチェーンで、この会社に広告業務を提供していたが、入金が遅れ、取り立てもできない状態が続いているという。なお、脱毛サロンはサイバー・バズのリリースでは匿名だが、「ミュゼプラチナム」のこと。
ミュゼプラチナムの当時の親会社が船井電機・ホールディングス(HD、現FUNAI GROUP=破産開始の決定手続きを受けた船井電機の親会社、船井電機HDが24年10月に社名変更)で、船井電機HDの信用力を背景に取引してきたが、同社の財務状況などの確認が不十分だったと説明している。
コーポレートガバナンスを考えるうえでも、船井電機をめぐる動きは今後も要注目だ。
【サイバー・バズ】財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備及び内部統制報告書の訂正報告書の提出に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241224543245.pdf
「ニデック」が「牧野フライス」にまたも“同意なきTOB”
東証プライムで工作機械メーカーの牧野フライス製作所(東京・目黒区)は12月27日、ニデック(旧日本電産)から、株式公開買い付け(TOB)に関する発表があったことを明らかにした。事前の連絡は受けていないという。今後、情報収集して牧野フライスとしての見解を公表するという。
ニデックも同日のプレスリリースで、事前に協議の申し入れは行っていないことを明記。ニデックはそのうえで、経済産業省が2023年8月に指名した企業買収における行動指針には「株主意思の原則」や「透明性の原則」が盛り込まれていることを指摘し、「対象者の株主の皆様に一切の状況をお伝えすることで、本取引の是非や取引条件に関して正しい選択をすることができる」と説明している。
ニデックは23年にも、事前に相手に知らせずに工作機械メーカーTAKISAWAのTOBを実施した過去がある。結果的にTAKISAWAはこれに賛同してTOBが成立。まさに“同意なきTOB”なわけだが、産業界でもこの手法に注目が集まっていた。今後、同意なきTOBが他社にも広まりそうだ。
【牧野フライス製作所】ニデック株式会社による当社株式に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241227545607.pdf
「LINEヤフー」が情報漏洩問題で総務省に報告書
東証プライム上場のLINEヤフーは12月27日、利用者情報などが漏洩した問題で総務省に報告書を提出したと発表した。
内容は、同省の行政指導を受け、再発防止策などを示した2024年4月の報告書の実施状況。問題視された大株主で韓国ネイバー社とのシステム分離については、国内や国外で段階的に進めていることを強調し、26年3月に終わる予定という。
【LINEヤフー株】総務省への報告書の提出について(2024年12月27日付報告書)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241224543954.pdf
一風堂の運営会社「力の源HD」が配当分配額を“超過”
東証プライム上場で博多ラーメンチェーン「一風堂」を運営する力の源ホールディングス(HD)は12月30日、1株あたり9円の中間配当(総額2億7276万円、2024年11月の取締役会で決議・実施)と、7万2100株分の自社株買いについて、会社法の分配可能額を超えていたと発表した。
分配可能額は、剰余金をもとに計算されるが、当時は利益剰余金が減少傾向にあったという。原因究明や再発防止策の観点から第三者委員会の設置も検討する。
2年ほど前から、増加する配当や自社株買いを背景に会社法の分配可能額を超過するケースが出てきている。今後、監査法人の責任も問われそうだ。
【力の源HD】分配可能額を超えた当期の中間配当金と自己株式取得に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241227546000.pdf
(平日連載、1月6日公表分に続く)
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