【2024年12月5日「適時開示ピックアップ」】オリンパス、千代田化工、ファーマライズ、Birdman、ビートHD
12月5日木曜日の東京株式市場は4日続伸した。日経平均株価は前日から119円値上がりし、3万9395円で引けた。前日の米国株の流れを引き継いだ。そんな5日の適時開示は118件だった。この中からコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。
「オリンパス」中国コンサル契約“株主代表訴訟”で原告の訴え棄却
東証プライムのオリンパスは、中国・深圳の現地法人のコンサルタント契約に絡む株主代表訴訟で、原告の株主の訴えが棄却されたと発表した。
この訴訟では、現地の税関の調査で製品の在庫数がマイナスになるという問題が発覚し、これらを解決するために地元の業者とコンサルタント契約を結んだことの是非が問われた。
ところが、この業者は中国国内で贈賄疑惑が報じられており、株主は、この人物とオリンパスとで不明朗な金銭のやり取りがあったと指摘。当時の役員がこれを承認もしくは黙認したことが任務懈怠にあたるとして、元取締役と元監査役の計11人に16億円の損害賠償を会社に支払うよう求めていた。オリンパスは原告側の補助参加していた。
なお、オリンパスの発表によると、元監査役2名に対する訴えは、原告の取下げにより終了している。今後の展開は不透明だが、海外子会社のコーポレートガバナンスは、巨大企業においても悩ましい問題だということを印象づけた。
【オリンパス】株主代表訴訟の判決に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241202532937.pdf
「千代田化工」米国LNG火災爆発訴訟で原告が控訴
東証スタンダード上場の大手エンジニアリング、千代田化工建設は、LNG(液化天然ガス)施設の火災に関連して米国で起こされた訴訟で、原告側が控訴したと発表した。今年11月22日に原告の請求が棄却されていた。
この訴訟は、2022年6月に千代田化工の米国の子会社CIC社が建設したLNG 施設で火災爆発事故が起き、この事業の顧客に保険金を支払った保険会社が、その代位求償を求めてCIC社などを訴えた。
米国のテキサス州南部地区連邦破産裁判所は、全国の請求を全面的に棄却する旨の判決を出していたが、今回、原告が控訴することとなった。
なお、千代田化工の筆頭株主は三菱商事で、同社の連結子会社。24年3月期の最終損益は158億円の赤字に転落。19年には三菱商事が三菱UFJ銀行と共同で1500億円を投融資した経緯がある。
【千代田化工建設】(開示事項の経過2)当社海外子会社に対する控訴に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241204533985.pdf
追徴課税3億円「ファーマライズHD」NHK報道に釈明リリース
東証スタンダードで調剤薬局を全国展開するファーマライズホールディングス(HD、東京・中野区)は、「本日の一部報道について」とのリリースを出した。
一部報道とは、NHKによる「ファーマライズ 3億円余 追徴課税」として放送されたニュースで、同社は、卸売業者からいったん商品を仕入れてからグループ会社に売る形をとることで消費税の還付を受けていたが、実際は卸売業者がグループ会社に直接、売っていたという内容。東京国税局から3億円余りの追徴課税を受けていたとしている。
当のファーマライズは「契約等の内容に東京国税局との見解に相違があり、指摘に沿って修正申告済み」とリリースでコメントした。2024年5月期の連結損益計算書に損失の拡大を反映していると説明している。
昨今、日本経済新聞をはじめマスコミ報道に対するカウンターリリースが増えている。リスクマネジメント上も必須となってきているか。
【ファーマライズHD】本日の一部報道について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241205534860.pdf
販促ベンチャー「Birdman」業績悪化で持ち分法適用会社化計画を撤回
東証グロース上場で、広告などで販売促進やブランディングの支援事業を展開するBirdman(バードマン、東京・渋谷区)は、物販などを手掛けるADOLOGI(アドロジ、東京・港区)を持ち分法適用会社にする契約を解除すると発表した。
資金面で計画の変更があったとして、Birdman側は「当社業績の悪化などに伴い、当社株式の大幅な下落もあり、以降の検討が双方で困難となり」と理由を説明している。
【Birdman】(開示事項の中止)株式会社 ADOLOGI の株式取得に関する 株式譲渡契約書の解除に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241205534880.pdf
ケイマン投資会社「ビートHD」83%株主の500億円調達提案に反対
東証スタンダード上場で、ケイマン諸島に登記された投資会社のビート・ホールディングス・リミテッド(ビートHD、)は、株式と新株予約権の発行で500億円の資金を調達するという株式提案に対し、会社として「支持する意向はない」と発表した。
この株主提案は、全体の83%超の株式を保有するシンガポール所在のLian Yih Hann(レン)氏らから出されたもの。500億円という多額の資金についてレン氏らは、「人工知能、バイオテクノロジー、宇宙技術及び知的財産権という4つの高成長分野に投資を行うことでより多くのリターンを得ることができる」と訴え、これらの投資には莫大な資金が必要としている。
これに対し、ビートHDは「当該資金の使途を明確に描くことが難しい状況です」と説明している。
なお、ビートHDはホームページで《ケイマン諸島に本社を置くグローバルな投資会社》として、子会社新華ビバイル(香港)リミテッド」を通じ知的財産権の取得等を展開。別の子会社「GINSMS Inc.」(トロント・ベンチャー証券取引所上場)を通じモバイル・メッセージング・サービス等を提供しているという。そして香港に事業本部を構え、日本、シンガポール、マレーシア、インドネシア、中国およびカナダに子会社を有している会社とのこと。
ともかくも、総計83%も保有する株主たちの提案に抗し切れるのか、注目される。
【ビート・ホールディングス・リミテッド】(続報)株主提案の受領に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241205534844.pdf
(平日連載、2024年12月6日公表分に続く)
関連記事
ピックアップ
- 【米国「フロードスター」列伝#4】シティグループで25億円横領した“ジャマイカから来た元少年”…
今回は、本誌「Governance Q」と公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiner…
- 【2024年12月19日「適時開示ピックアップ」】日テレHD、ソニー、KADOKAWA、大黒屋、メル…
12月19日木曜日の東京株式市場は5日続落した。終値は前日比268円安の3万8813円銭だった。前日の米国株の下落が響いた。そんな19日の適…
- 吉田兼好「何方をも捨てじと心に取り持ちては、一事も成るべからず」の巻【こんなとこにもガバナンス!#4…
栗下直也:コラムニスト「こんなとこにもガバナンス!」とは(連載概要ページ) 「何方をも捨てじと心に取り持ちては、一事も成るべからず」吉田兼好…
- 【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#6】豪英リオティント、エクイノール、英BP、仏トタル、日本ケミ…
豪英リオティント経営陣、ロンドン上場廃止要求を拒否 豪シドニー、英ロンドン両市場に二重上場する資源大手リオティントの経営陣に対し、物言う株主…
- 十二月大歌舞伎「あらしのよるに」と株主価値の最大化原則【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#7】…
遠藤元一:弁護士(東京霞ヶ関法律事務所) 歌舞伎版「あらしのよるに」を見て考えたこと 12月に入り今年も残すところあとわずか。先週、歌舞伎座…
- 【ベーカー&マッケンジー 井上朗弁護士が徹底解説】トランプ政権は日本企業のガバナンスにどう襲…
ベーカー&マッケンジー法律事務所・井上朗弁護士 ドナルド・トランプ次期米政権の政策の輪郭が、見え始めてきた。「アメリカ・ファースト」…