【2024年11月7日「適時開示ピックアップ」】住友ゴム、日産、サーラコーポレーション、KDDI、王子HD、I-PEX
トランプ当確から一夜明けた11月7日の東京株式市場は反落した。日経平均株価は前日比99円値下がりし、3万9381円で引けた。節目の4万円に迫り、高値警戒感が出ているとの報道もある。そんな7日の適時開示は、2025年3月期の中間決算を発表する企業が増えて615件となった。この中からコーポレートガバナンスやリスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。
「住友ゴム」米国のタイヤ工場を解散
東証プライムの住友ゴムの米国子会社スミトモラバーUSAで生産を終了し、会社を解散することを決めた。同社は北米市場向けの需要に応えるために、2015年 10 月に米グッドイヤーとの合弁事業を解消した時に子会社化。乗用車やトラック向けのタイヤを製造してきたが、生産性や収益性が悪化して採算がとれない状態が続いていた。1920年創業で、従業員は1555人。住友ゴムは約650億円の損失を見込んでいる。
【住友ゴム】連結子会社の生産終了及び解散 並びにその他の費用の計上に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241107514758.pdf
ゴーン氏の亡霊? 「日産」が大規模リストラなど合理化策発表
各メディアが大きく報道する通り、東証プライムの日産自動車が合理化策を発表した。世界全体で生産能力を20%減らし、9000人を削減する(連結従業員13万人)。11月7日に発表した2025年3月期の中間決算では営業利益が9割減の329億円となり、事業構造の再構築を図るとしている。そして、三菱自動車の株も手放し所有する34.07%のうち、最大10.02%分を三菱⾃動⾞に売却する。19年年末のカルロス・ゴーン元社長のレバノン逃亡からもうすぐ5年。ゴーン氏は古巣をどのように眺めているのだろうか。
【日産自動車】人員削減等の合理化に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241107513619.pdf
「サーラコーポ」が安江工務店TOBで愛知の住宅業界再編
東証プライム上場で、愛知県などでガス事業を展開するサーラコーポレーションは、東証スタンダード上場でリフォーム事業の安江工務店(名古屋市)を買収する。11月8日から株式公開買い付け(TOB)を始める。安江側も賛同している。サーラコーポレーションは住宅関連事業にも力を入れており、営業が重複する地域などで今後、協力してシナジー効果を出していくという。なお、買い付け価格は2150円で、8日の終値は1515円だった。
【サーラコーポレーション】株式会社安江工務店株券等(証券コード:1439)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241107514449.pdf
「KDDI」情報セキュリティのラックをTOBで完全子会社化
東証プライムのKDDIは、東証スタンダードに上場する情報セキュリティのラックを買収すると発表した。11月下旬に株式公開買い付け(TOB)を始める。ラック側も賛同して株主にKDDIへの売却を推奨しており、TOBが完了すればラックは上場廃止になる。KDDIは2007年にラックと資本提携し、すでに31%の株式を持っているが、完全子会社がしてセキュリティ事業を強化する。なお、買い付け価格は1160円で、東証は11月7日、「監理銘柄(確認中)」に指定した。
【KDDI】株式会社ラック株式(証券コード:3857)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241107514640.pdf
「王子HD」政策保有株の縮減を“300億→700億円”に強化
東証プライムで製紙大手の王子ホールディングス(HD)は、政策保有株式の縮減策を強化する。今年4月、2027年度までに300 億円減らす目標を立てたが、これを700億円に引き上げる。対象の企業と「丁寧な対話」を行って縮減を進めるとしている。売却で得た資金は、事業への投資や、配当や自社株買いなどの株主還元に活用するという。
【王子ホールディングス】保有株式の縮減に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241106513268.pdf
京都の精密金型「I-PEX」創業家がMBO
東証プライムで精密金型メーカーのI-PEX(アイペックス、京都市)は、MBO(経営陣買収)を実施することを発表した。11月8日から12月19日まで株式公開買い付け(TOB)が行われ、上場廃止になる。買い付け価格は2950円で、11月7日の終値は1599円だった。同社によると、パソコンや自動車部品の業界では今後、厳しい競争が予想され、持続的な成長のためには、足元の業績ではなく、中長期的な視野に立った経営体制が必要と説明している。
I-PEXは1963年に第一精工として創業(2020年に社名変更)。コネクタおよびエレクトロニクス機構部品などを手掛ける。23年12月期の売上高は590億円、純利益は12億円の赤字だった。筆頭株主は創業家の小西家の資産管理会社DMC(京都市)で、24年6月現在、36.77%の株式を保有。同社が設立した買収目的会社がTOBを実施する格好だ。なお、上位10株主が65.96%を占める。
【I-PEX】MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241106513290.pdf
(平日連載、2024年11月8日公表分に続く)
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