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【2024年10月4日「適時開示ピックアップ」】サイバー・バズ、三陽商会、広済堂HD、サンエー、サンテック 他

10月4日金曜日の東証株式市場は続伸した。この日の適時開示は166件。この中からコーポレートガバナンスやリスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップし、周辺情報も交えてお送りする。

ネット広告「サイバー・バズ」船井電機株差し押さえの“一部報道”対応

■東証グロース上場でネット広告のサイバー・バズが、「一部報道について」というリリースを出した。「一部報道について」というタイトルは、マスコミによる報道が先行し、会社としてその事実を認めるかどうかという発表の時に用いられるものだ。サイバー・バズのリリースを読むと、この“一部報道”とは『朝日新聞』の10月3日付の配信記事と見られる。

その記事は、“あるネット広告会社”がAV機器メーカー、船井電機の株式の9割を仮差し押さえしたという内容。このネット広告会社というのがサイバー・バズにほかならない。船井電機を傘下に持つ船井電機・ホールディングス(船井HD)は2023年に脱毛サロンチェーンを買収しているが、この脱毛サロンがサイバー・バズに支払う広告代金が未納となっており、2023年10月~24年3月期に22億円の損失を計上している。脱毛サロンの代金について、船井HDが連帯保証していたため、傘下の船井電機株を仮差し押さえたようだ。

サイバー・バズは5月8日に開示した「債権の取立不能または取立遅延のおそれによる貸倒引当金繰入額の計上に関するお知らせ」に関するものと認めたうえで、「債権の回収が確定しているものでない」として、今後、状況を精査してから改めて開示するとしている。

一方、船井側は10月4日、法廷外におけるコメントを差し控える旨をリリース。船井電機はテレビのOEM(相手先ブランド名製造)で成長したが、21年に出版社、秀和システムの子会社がTOB(株式公開買い付け)を実施。23年3月に船井HDに移行し、同年4月に件の脱毛サロンを買収する傍ら、経営陣も大幅に入れ替わっており、今後の動向に目が離せない。

【サイバー・バズ】一部報道について
https://ssl4.eir-parts.net/doc/7069/tdnet/2507389/00.pdf

バーバリーショックから復活か「三陽商会」のPBR強化策

■東証プライム上場でアパレル大手の三陽商会は、「PBR改善計画の進捗状況」を発表した。同社は2024年2月期もPBR(株価純資産倍率)0.72倍と1倍を割っており、今後、投資家や株主に対する説明会を催したり、英文開示を強化したりして取り組みをアピールしていく考えだ。また、この対策の一環として、株式総数の8.6%に当たる101万株の自己株式を取得(30億円を上限)することを発表した。

三陽商会は15年にドル箱だった英バーバリーとのライセンス契約を解消し、長く業績が低迷していたが、23年2月期に7期ぶりの黒字化を達成。24年2月期も増収増益だった。周知の通り、PBRは株式の時価総額が企業の純資産の何倍になっているかを示す指標で、東証は上場各社に対し、昨年から“解散価値”である「1倍」を超えるよう働きかけ、下回る企業には説明を求めるようになっている。

【三陽商会】PBR改善計画の進捗状況
https://ssl4.eir-parts.net/doc/8011/tdnet/2507417/00.pdf

半導体「ローツェ」ベトナム子会社の台風被害を算出

■東証プライム上場の半導体関連メーカー、ローツェはベトナムの子会社が台風11号で受けた被害を公表した。被害の見込み額は、工場の建物や設備など4億4300万円に及んだという。被害額の大半は保険金で補償される見通しで、グループの業績に与える影響は軽微としている。猛烈な勢力になった台風11号は9月上旬、ベトナムを直撃。一部の報道では、250人以上の死者が出たとされる。

【ローツェ】台風11号による当社子会社への影響に関するお知らせ(第3報)https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241003593539.pdf

沖縄の地場スーパー「サンエー」が“55年連続の売上増”に王手

■沖縄県を代表するスーパーで東証プライム上場のサンエーが4日に発表した2025年2月期の中間決算は、売上高にあたる営業収益が前年同期比5.1%増の1206億円だった。2024年2月期の売上高は前期比7%増の2275億円で、54年連続で過去最高を更新。今期も過去最高になる可能性が高まっている。サンエーは沖縄に根付いたスーパーとして知られるほか、ローソンと提携するなど、本土の小売り大手とも協力して売り上げを伸ばしている。内外からの観光客の増加も追い風となっているという。片や、サンエーは同日、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応に関するお知らせ」も発表している。

【サンエー】2025年2月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)
https://www.san-a.co.jp/common/uploads/2024/10/5667d76826dba230032c1f1a1666a614.pdf
【サンエー】資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応に関するお知らせ
https://www.san-a.co.jp/common/uploads/2024/10/0861e041f2421928e911861aadc83544.pdf

監査の意見不表明で「サンテック」が内部統制アドバイザーを選任

■東証スタンダード上場で電気施設や空調設備を手掛けるサンテックは、内部統制のアドバイザーとしてOAG監査法人を選任したと発表した。このことで上場会社として求められる会計基準や公開情報に対する理解を深めるという。

同社は今年6月25日、RSM清和監査法人が工事費用や見積額について十分な証拠を得ることができなかったとして「監査意見不表明」を出したと発表。RSM清和は辞任し、一時監査法人を選任した。この問題を調べた第三者委員会によると、意見不表明の原因は、見積もりの誤りや採算管理に不備があったほか、前年にそれまで四十数年担当した監査法人が辞任しており、コミュニケーションにも課題があったことを指摘している。

【サンテック】第三者調査委員会の再発防止策提言への取組み 及び内部統制アドバイザー契約に関するお知らせ
https://ssl4.eir-parts.net/doc/1960/tdnet/2507653/00.pdf

「広済堂HD」子会社・東京博善の取引めぐる監査法人の疑義等で決算訂正

■東証プライム上場で葬儀場などを運営する広済堂ホールディングスが、有価証券報告書を訂正した。2024年3月期の決算で子会社、東京博善との取引(役務提供契約)に絡んだ売上高の計上に会計監査人だった興亜監査法人(当時)から疑義が呈され、興亜は辞任した。同社は社内調査委員会を設けて対応し、新たな監査法人と協議した結果、「複数の重要でない誤謬」について訂正することを決めたという。広済堂HDはまた、内部統制に関して開示すべき不備があったと公表した。役務提供契約の事実、すべて当時の監査法人に対して提供されなかったことや、一部に決裁機能の形骸化があっとしている。

【広済堂HD】過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度の決算短信の訂正に関するお知らせ
https://pdf.irpocket.com/C7868/EAzE/atCy/ky9f.pdf

(平日連載、2024年10月7日公表分に続く)

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