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【2025年1月24日「適時開示ピックアップ」】クシム、川崎重工、日本板硝子、プロレド・パートナーズ、HIS、サンコール、串カツ田中HD

1月24日の東京株式市場は5日ぶりに反落した。利益確定売りに押され、日経平均株価の終値は前日比26円安い3万9931円だった。今週、トランプ米大統領のAI(人工知能)戦略の影響で高騰していた、孫正義氏率いるソフトバンクグループも値下がりに転じた。そんな24日の適時開示は187件。これらの中から、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ。周辺情報も交えて紹介する。

暗号資産「クシム」株主からの“臨時株主総会”請求退ける

東証スタンダード上場で、ブロックチェーンの開発や暗号資産の交換所を運営するクシム(東京・港区)は、2人の株主から受けていた臨時株主総会の招集請求について、「請求は不適法で、検討する余地はない」と応じない意向を示した。

同社は1月16日に株主から臨時株主総会の招集請求を受けていた。24日に個別株主通知を受領したが、保有期間の要件を満たしていなかったとしている。この株主は、取締役の田原弘貴氏で、社内情報を漏洩したとして昨年11月25日に取締役会から辞任勧告を受けている(参考記事)。

ちなみに、個別株主通知は、株主が権利行使をする場合、事前に証券会社を通じて会社側に保有する株式数通知する制度。本誌でも既報の通り、昨今注目を集める暗号資産だが、それを扱う企業のコーポレートガバナンスが大きく揺らいでいるようだ。

【クシム】よる臨時株主総会の招集請求に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250124554719.pdf

船舶エンジン不正「川崎重工」調査委が指摘した“内部通報なし”の原因

東証プライムの川崎重工業は、船舶用エンジンの検査不正を調べるため外部の弁護士でつくる特別調査委員会の中間報告を公表した。

報告書では、燃料消費量について〈実測値よりも少ない燃料消費量が測定 されるように操作していた場合が多かったが、ばらつきを少なく見せる目的の場合、実測値よりも多い燃料消費量が計測されるように操作していた〉などと指摘している。

また、特別調査委は再発防止策にも言及、内部通報制度の充実などを求めた。中間報告では、同社の内部通報制度は〈一般的な水準〉としながらも、

〈本件舶用エンジン事業に係る一種の共同体において抱え込んでいる問題であったために、部外者に知らせることがためらわれたものと推測されるが、本件不正行為について疑問や懸念を有していた者は常に存在はしていたのであるから、内部通報制度がより深く浸透していたならば、より早期に、本件不正行為に関する通報がなされた可能性もある〉

と指摘し、内部通報の利用を推奨するよう求めた。中間報告でも指摘されたこの手の“共同体”意識は、日本企業の多くに共通するものと思われるが、川崎重工にはコンプライアンス意識もさることながら、コーポレートガバナンス、引いては企業風土の見直しが必要と言えそうだ。

【川崎重工業】(開⽰事項の経過) 舶用エンジン事案に関する特別調査委員会の調査結果(中間報告)について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250123554498.pdf

「日本板硝子」自動車用ガラス需要不振でドイツ事業見直し

東証プライムの日本板硝子は、ドイツにおける自動車用ガラスの生産体制を見直すと発表した。対象となったのはヴィッテン工場(北西部ノルトライン=ヴェストファーレン州)で、約80人の人員削減を計画している。

同社は、ドイツを含む欧州地域で自動車用ガラス市場の需要が弱まっている一方で、コストの上昇が続いていることを挙げ、生産体制の適正化による収益完全を目指すとしている。これにより、同社グループでは2025年3月期に退職関連費用を含む一時費用として約11億円の個別開示項目経費の計上を見込む。

昨年から中国勢が電気自動車(EV)の分野で市場を拡大させており、ドイツのフォルクスワーゲンなどが苦戦してリストラを進めているとの報道が目立っている。

【日本板硝子】ドイツの自動車用ガラス生産体制見直しおよび個別開示項目費用の計上について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250124554573.pdf

コンサル「プロレド・パートナーズ」子会社代表を“背信的行為企図”等で解任

東証プライム上場で、成果報酬型の経営コンサルティングや投資事業を展開するプロレド・パートナーズ(東京・港区)は、1月24日開催した臨時株主総会で、子会社ブルパス・キャピタルの代表取締役を解任したと発表した。

ブルパス・キャピタルは非公開会社に投資するプライベート・エクイティ(PE)ファンドの運用などを行っているが、解任されたのは梅村崇貴代表。解任理由は〈ファンド運営に関わる背信的行為を企図するなど、当該社の代表取締役として不適切な行為を行ったため〉としている。

後任には、プロレド・パートナーズ代表の佐谷進氏が就く。ちなみに、梅村氏は新日本監査法人(現EY新日本監査法人)で会計監査、IPO(新規株式公開)支援などを経験、2020年にブルパス社を創業、その後、多くの企業の取締役に就任している。

親会社の詳しい説明はないが、上記の通り、「背信的」などという強い言葉を使って理由を説明しているが、今後の展開が注目される。

【プロレド・パートナーズ 】当社子会社代表取締役の解任に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250124554593.pdf

雇用助成金不正支出「HIS」が有価証券報告書提出を延期

東証プライムのエイチ・アイ・エス(HIS)は、1月31日が提出期限となっている2024 年10月期の有価証券報告書について、提出期限の延長を申請する方針だ。

昨秋、HISの連結子会社で政府の雇用調整助成金の不正受給の疑いが発覚。特別調査委員会が調べているが、完了まで相当の時間がかかるという。公表時期については、見通しが立った段階で公表する。

【エイチ・アイ・エス】有価証券報告書の提出期限延長申請の検討に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250124554688.pdf

精密部品「サンコール」早期退職に対象者7割の113人応募

東証スタンダード上場で精密部品製造のサンコール(京都市)は、昨年9月に公表した早期希望退職者募集の結果を発表した。応募したのは113人で、4億9700万円の特別損失を計上する。

業績が悪化したハードディスク(HDD)用サスペンション事業から撤退する予定で、同事業の154人が対象となっていた。結果、7割が応募したことになる。なお、サンコールでは、この事業撤退の責任を取って会長らが辞意表明した経緯がある。

【サンコール 】 早期希望退職者の募集結果及び特別損失の計上に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250124554972.pdf

「串カツ田中」ロスに子会社を設立し“全米出店”の野望

東証スタンダードの串カツ田中ホールディングス(HD)は、米国に子会社を設立すると発表した。

同社は米国では西海岸北部のポートランド(オレゴン州)でカツサンドの店を3店舗展開しているが、今後、全米出店を目指し、まずはロサンゼルスに店舗展開するため、新会社をロスに設立する。

1月中の設立を見込み、事業の開始は2月を予定している。なにわの味「串カツ」が米国でどこまで通用するのだろうか。

【串カツ田中ホールディングス】子会社設立に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250124554874.pdf

(平日連載、1月27日公表分に続く

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