【米国「フロードスター」列伝#5】親友弁護士コンビの「史上最長インサイダー事件」を誘発した“大手ローファーム”のセキュリティ環境
今回は、本誌「Governance Q」と公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiners=ACFE、本部=米国テキサス州)特別連携企画「アメリカ『フロードスター』列伝」第4回「シティ『巨額横領』行員の復讐心」に続く第5回目。
本編で取り上げるフロードスターは、カナダとアメリカを舞台にし、「史上最長」とされる長きにわたってインサイダー取引に手を染めた元弁護士のカナダ人。その人物とは、同国の警備レベルが最高とさる刑務所ミルヘイブンとキングストン・ペニテンシャリー(2013年閉所、現在は博物館)、他4カ所の刑務所に収監され、かつ、米国連邦禁固刑を受けた唯一のカナダ人、元弁護士のジョセフ・グルモフセクである。
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【発生年】1994~2008年
【被害額】約900万ドル(当時のレートで約9億3000万円)
【罪種】インサイダー取引
グルモフセクはロースクール時代からの親友、ギル・コーンブルム弁護士と共同で、約15年に及ぶ長期間にわたってカナダとアメリカの両国でインサイダー取引を行った。これは、カナダ史上最大であり、北米でも最大級かつ最長にわたるインサイダー取引事件である。
法を正義に活かすことなく、私利私欲から職権的地位や職務を悪用し、闇に落ちたグルモフセクとコーンブルムの共謀。その果てには永遠に失われたものがあった――。
本特集は不正対策を使命とする世界的組織、ACFEアメリカ本部の全面協力によるものである。ACFEは日本をはじめ全世界200近い支部で構成され、9万人以上の不正対策分野のエキスパートである会員を擁し、不正防止・早期発見に取り組めるよう、さまざまな教育・支援プログラムを提供している。
その一環で、「フロードスター」と呼ばれる、有罪判決を受けた不正実行者に報酬を支払わない方針でインタビューや講演を実施し、カンファレンスやセミナー、ウェビナーなどを介して、不正対策教育プログラムに組み込んでいる。
本回もこれまでと同様のアプローチで、ACFE本部が「フロードスターとの会話」(Conversation with a Fraudster)と銘打ったインタビューをもとに、グルモフセクのストーリーをお送りする。
なお、本記事にある「インタビュー」とは、上記インタビューを指す。そして今回も、試みレベルではあるが、1950年代のアメリカの犯罪学者ドナルド・R・クレッシーの提唱した「不正のトライアングル」にも照らし合わせてみた。
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