【米国「フロードスター」列伝#2】国際サイバー犯罪の元祖インターネットのゴッドファーザー
本誌「Governance Q」と公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiners=ACFE、本部=米国テキサス州)の特別連携企画「アメリカ『フロードスター』列伝」第1回の豪華フェス主催者に続く第2回目の「フロードスター」は、元インターネット詐欺実行者である。
「シルクロード.com 史上最大の闇サイト」(2021年、ティラー・ラッセル監督)として映画化され、“史上最大の闇市場”と言われた違法薬物サイト「シルクロード」(Silk Road)の摘発などがあるが、サイバー犯罪は世界が抱える重大な脅威である。そのサイバー犯罪において、米国シークレットサービスから「元祖インターネットのゴッドファーザー」と異名をつけられた男が今回の主人公である。彼の名はブレット・ジョンソンーー。
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【発生年】2002~2006年
【被害額】推定総額約1億ドル超(当時のレートで約114億円)
【罪種】コンピュータに関する共謀、アクセス機器詐欺、身分証明書詐欺、個人情報窃盗・詐欺および関連行為等 計39種類
ジョンソンは2002年に「シャドウ・クルー」(ShadowCrew)という、最初の組織的サイバー犯罪コミュニティを創設し運営した。このサイトは今日のダークウェブ市場の先駆けであり、現代のサイバー犯罪の仕組みの基礎とも言われている。
彼の犯罪経歴は子ども時代の窃盗から始まり、ついには世界中に広がる大規模な不正ネットワークへと発展、結果的に39種もの詐欺犯罪となった。「今日のサイバー犯罪の礎を築いた」と言わしめたジョンソンが語る彼の犯した罪の実態と心理は、いまだ蔓延るサイバー犯罪を理解する上で、格好の“手引き”となるだろう。
本特集は不正対策を使命とする世界的組織、ACFEアメリカ本部の全面協力によるものである。ACFEは日本をはじめ全世界200近い支部で構成され、9万人以上の不正対策分野のエキスパートである会員を擁し、不正防止・早期発見に取り組めるよう、さまざまな教育・支援プログラムを提供している。
その一環で、「フロードスター」と呼ばれる、有罪判決を受けた不正実行者に報酬を支払わない方針でインタビューや講演を行い、カンファレンスやセミナー・ウェビナーなどを介して、不正対策教育プログラムに組み込んでいる。
本回も前回の【米国「フロードスター」列伝#1】「カリブ海豪華フェス」不正実行者の所業と弁明と同様のアプローチで、ACFE本部が「フロードスターとの会話」(Conversation with a Fraudster)と銘打ったインタビューをもとに、ジョンソンのストーリーをお送りする。
なお、本記事にある「インタビュー」とは、上記インタビューを指す。そして、試みレベルではあるが、1950年代のアメリカの犯罪学者ドナルド・R・クレッシーの提唱した「不正のトライアングル」にも照らし合わせてみた。
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