【オリエンタルランド秘史#10】“怪物政商”小佐野賢治に食われた創業メンバー
館山市ディズニーパレードの予期せぬ波紋
(#9から続く)2024年1月1日の昼下がり、JR舞浜駅南口に降り立つと、普段と同じ“非日常”がそこにはあった。新年を祝う看板やポスターはどこにも見当たらない。東京ディズニーリゾート(TDR)に向かう人々でごった返し、いつもの休日と変わらない光景が眼前に広がる。非日常の演出はTDRを運営するオリエンタルランドではなく、米ウォルト・ディズニー・カンパニー(DIS)の意思が強く反映されている。
昨年11月12日には館山市、同23日には千葉市で千葉県誕生150周年記念パレード(#7参照)が開かれた。いずれもTDRによるスペシャルパレードがトリを務め、大いに盛り上がったが、その後、波紋を呼ぶ出来事が起こった。館山市はスペシャルパレードの写真を広報誌「だん暖たてやま」2024年1月号の表紙に使おうと、ゲラ刷りをオリエンタルランドに送付した。ところが、答えはNG。DISから「ディズニーのキャラクターが写る写真の使用はまかりならない」と横槍が入ったのだ。
ディズニーのキャラクター管理が特に厳しいことはよく知られているが、自治体の広報誌は商業的な媒体とは異なる。しかも、千葉県はオリエンタルランド株4.03%を所有し、信託口を除けば、京成電鉄、三井不動産に次ぐ第3位の大株主なのだ。これまでの持ちつ持たれつの関係を考えれば、オリエンタルランドにとって千葉県はシェアホルダーであり、最も大切なステークホルダーのひとつであるのはいうまでもない。今回の件は千葉県が直接依頼したわけではないが、県政150周年という節目である。
オリエンタルランドとしては、ディズニーキャラクターたちのパレードによって、千葉県に御恩返ししようとしたわけだが、館山市の広報誌をめぐるDISの”裁定”によって、その許容範囲が明示された格好だ。いずれにせよ、オリエンタルランドはDISのキャラクターを使わせてもらう一興行主に過ぎないのである。
このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。
ご登録済みの方は、こちらからログインして下さい
まだGovernance Q会員(無料)に登録されていない方はこちら
会員限定記事が読み放題!
会員(無料)に登録関連記事
ピックアップ
- 【米国「フロードスター」列伝#2】国際サイバー犯罪の元祖インターネットのゴッドファーザー…
毒親に育てられた“万引き家族” アメリカの東部、南部、そして中西部に囲まれた「経済と文化のクロスロード」ケンタッキー州。ブレット・ジョンソン…
- 【2024年11月21日「適時開示ピックアップ」】バロックジャパン、電業社機械製作所、JR九州、BE…
11月21日の東京株式市場は続落した。日経平均株価は前日比326円安い3万8026円で引けた。米半導体大手のエヌビディア(NVIDIA)が2…
- 安藤百福「素人だから飛躍できる」の巻【こんなとこにもガバナンス!#36】…
栗下直也:コラムニスト「こんなとこにもガバナンス!」とは(連載概要ページ) 「素人だから飛躍できる」安藤百福(あんどう・ももふく、実業家) …
- 【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#2】米エヌビディア、豪レゾリュート・マイニング、加バリック・ゴ…
組閣人事報道も相次ぎ、世界がトランプ米大統領の再来前夜に揺れ動く中、世界では、どんなコーポレートガバナンスやサステナビリティ、リスクマネジメ…
- 鳥の目・虫の目・魚の目から見る「公益通者保護法」の再改正【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#5】…
「EU公益通報者保護指令」を参考に では、不利益処分の禁止の実効性を高めるにはどのような規定を定めるべきなのか。この問題を「鳥の目」「虫の目…
- 【米国「フロードスター」列伝#1】「カリブ海豪華フェス」不正実行者の所業と弁明…
豪華フェスの壮大な計画 「麻薬王パブロ・エスコバルが所有していた、バハマの孤島で史上空前のラグジュアリーな音楽フェスをセレブと一緒に体験でき…