【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#8】出光、サグリ、越ラムソン製糖、インドネシア・ティマ、トタル、キャドバリー、ユニリーバ
出光やサグリ、ベトナムで「環境再生型農業」実施へ
出光興産と、衛星データを活用して農業支援サービスを提供するサグリ(兵庫・丹波市)、ベトナムの食品・飲料メーカーのラムソン製糖の3社はこのほど、同国中部タインホア省で、サトウキビ畑由来のカーボンクレジット(炭素排出権)の創出に共同で取り組むと発表した。
ラムソンの契約農家が耕作する畑で、サグリの衛星解析技術に基づくモニタリングを活用した「環境再生型農業」を実施。土壌や生育の状況を把握して肥料の量を抑えることなどにより、温室効果ガスの一種である一酸化二窒素などの排出を減らし、カーボンクレジット登録を目指す。
出光は資金面やオペレーション管理でプロジェクトに参画する。
2025年初めに実証実験を開始。温室ガス削減効果を検証し、十分な削減が確認されれば、カーボンクレジット認証最大手の米ベラが定める農地管理改善方法論「VM0042」に沿った認証手続きに入る。認証されれば、ベトナムで初めてのVM0042登録となる。
実証実験は当初約500ヘクタールで開始し、26年半ばまでの認証獲得を目標とする。同年以降は、対象農地を約8000ヘクタールへと拡大する計画だ。
【出光興産、ラムソン製糖、サグリ】出光興産、Lasuco、サグリが連携し、ベトナム国内初の農地管理改善カーボンクレジット登録を目指し協業に合意 2026年事業化に向け、衛星解析技術を活用した環境再生型農業の実証を開始
https://www.idemitsu.com/jp/news/2024/241223_2.pdf
インドネシア政府系スズ生産大手ティマが絡む汚職事件で仲介役に禁錮6年半の判決
インドネシア・ジャカルタの汚職裁判所はこのほど、政府系スズ生産大手ティマが絡む汚職事件で、仲介役を務めた著名実業家に禁錮6年半の実刑を言い渡した。
事件は、2015~22年にティマがバンカブリトゥン州で違法採掘されたスズを買い取り、主に環境被害などを通じて国に300兆ルピア(1ルピア=約0.0097円)の損失を与えたとされるもの。著名実業家のハーベイ・モイス被告が、実際に採掘を行った地元企業リファインド・バンカ・ティン(RBT)とティマの仲介役を務めたとされる。
ハーベイ被告はマネーロンダリング(資金洗浄)の罪にも問われ、罰金10億ルピアと補償金2100億ルピアの支払いも命じられた。
RBT社長のスパルタ被告には禁錮8年と罰金10億ルピア、補償金4兆5700億ルピアの支払い、同社取締役のレザ・アンドリアンシャ被告には禁錮5年と罰金7億5000万ルピアの判決がそれぞれ言い渡された。
仏トタル、モザンビークでのLNGプロジェクト向けに米輸銀融資獲得目指す
仏エネルギー大手トタルエナジーズは、モザンビークで進めている液化天然ガス(LNG)プロジェクトについて、米輸出入銀行の融資47億ドル(約7400億円)の確実な実行を求めている。
米輸銀の融資は2019年に承認されていたが、北部カボデルガード州でイスラム過激派系の武装勢力による襲撃事件が発生したことから、トタルが21年に不可抗力条項を宣言。プロジェクトはそれ以来、中断しており、融資も実行されていない。
このため、トタルのパトリック・プヤンヌCEO(最高経営責任者)はこのほど、米当局に書簡を送り、モザンビーク情勢は著しく改善しているとし、融資の確実な実行を要請した。
トタルとしては、ドナルド・トランプ次期米政権下で融資手続きが滞ったり、あるいは新たな条件が課されたりする恐れがあると危惧している。
モザンビークでは24年10月に行われた大統領選の結果に抗議するデモが各地で発生している。米政府が懸念を募らせ、融資自体に影響を与えかねない点も、トタルが融資の早期実行を働きかけている理由のひとつだ。
英キャドバリー「王室御用達」認定喪失の背景に“ロシア事業”か
英菓子・飲料メーカーのキャドバリーが、チャールズ国王の即位後初となる「王室御用達リスト」の見直しで、170年間維持した認定資格を失った。
王室御用達は、高品質の証しともなる。王室御用達協会によると、認定を受けた企業は、英王族の紋章を「製品、包装、文房具、広告、建物、車両」に表示する権利を得る。売り上げへの影響を定量的に示すのは難しいが、企業にとって知名度向上につながるのは間違いない。
今回の見直しに向け、市民団体「B4ウクライナ」は、ロシアによるウクライナ侵攻開始以降もロシア事業を続けている企業を標的に、御用達リストから外すよう要求していた。
特にキャドバリー親会社の米食品大手モンデリーズ・インターナショナル、英領バミューダに本社を置く蒸留酒メーカーのバカルディ、スイスの食品大手ネスレ、英・オランダ系の日用品・食品大手ユニリーバの各社の認定取り消しを求めていた。
ふたを開けてみれば、新たに御用達認定を受けた386社のリストにバカルディ、ネスレ両社は残留。それに対し、キャドバリー、ユニリーバなど100社の名前は消えていた。理由は開示されていない。
近年、御用達リストは、高い品質や優良なサービスといった基準に照らして合格点を与えるだけにとどまらず、特に人権尊重などの観点に基づきお墨付きを与えるものともなっている。
【英王室御用達協会】New Royal Warrants Granted
https://www.royalwarrant.org/news/new-royal-warrants-granted
(毎週火曜日連載、次回#9は1月14日公開予定)
関連記事
ピックアップ
- 日本内部監査協会・土屋一喜代表理事「ガバナンスの“縁の下の力持ち”が脱皮する年に」【新春インタビュー…
土屋一喜:日本内部監査協会代表理事・専務理事 「Governance Q」新春インタビュー企画第8回は、日本内部監査役協会代表理事で専務理事…
- “大川原化工機事件”代理人・髙田剛弁護士「警察でも“内部不正告発”を止められない時代」【新春インタビ…
髙田 剛:和田倉門法律事務所代表パートナー弁護士 2025年正月4日放送の「NHKスペシャル」でも改めて注目を集めた大川原化工機事件。警視庁…
- 【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#9】アップル、アディダス、H&M、GAP、英国マクドナ…
アップル取締役会「多様性対策撤回」の動きに追随せず 米IT大手アップルの取締役会は株主に向け、2月25日に開かれる株主総会で「多様性・公平性…
- 【米国「フロードスター」列伝#5】親友弁護士コンビの「史上最長インサイダー事件」を誘発した“大手ロー…
今回は、本誌「Governance Q」と公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiner…
- 丸木強・ストラテジックキャピタル代表「2025年もアクティビストの“職業倫理”を全うする」【新春イン…
丸木 強:ストラテジックキャピタル代表 各界の“賢者”が自らのガバナンス論を語る本誌Governance Qの2025年新春連続インタビュー…
- 髙田明・ジャパネットたかた創業者「ガバナンスを動かすのは他者への愛情だ」【新春インタビュー#5後編】…
髙田 明:ジャパネットたかた創業者・A and Live代表取締役 元日の前編から続くジャパネットたかた創業者の髙田明氏の新春インタビュー後…