【大手企業訴訟ウォッチ#5】逆風「楽天グループ」と3つの民事裁判
真夏の企業間訴訟、その中身とは
8月8日の岡山地方裁判所で、偽造した運転免許証でレンタカーを借りたことの違法性を問う、なんてことのない刑事裁判にもかかわらず、傍聴人のスマホやタブレットを封筒に入れた上にホチキスで封までするという物々しい判決公判があった。
7月5日に行われた同事件の初公判で、開廷中の法廷内のやりとりが同時中継的にSNSで配信されていたことが判明していたからだ。岡山地裁は県警に告訴状を提出しているが、犯人はいまだ見つけられずの状況が続いている。
ところで、公判中の撮影や録音と言えば、新潮社の写真週刊誌『FOCUS』(2001年休刊)の、ロッキード事件における田中角栄の「法廷写真」が思い出される。掲載されたのは、創刊から半年余りの1982年4月9日号。ただ、撮影した福田文昭カメラマンは後に、裁判所から苦情はあったものの、強い抗議はなかったと述懐していたように記憶している。
それが今回は一転の告訴。確かに、スチールカメラの撮影とSNSの実況中継では大いに質を異にし、「裁判公開の原則」を屋台骨から揺るがすものなので、致し方ないが、時代を感じる。
また、裁判に関わるニュースとしては、9月5日に初公判を迎えた「京都アニメーションの放火殺人事件」で、長期審理が毛嫌いされて裁判員の候補者の多くが辞退したり、ジャーナリストの江川紹子氏が京都地裁に対し、裁判公開の原則の観点から、被害者の安易な匿名措置を止め、一般の傍聴席を十分に確保するよう要望が出されたりしている。
前置きが長くなってしまったが、今夏、気になった企業裁判をいくつか取り上げる。
・【原告】日本IBM【被告】文化シヤッター【内容】損害賠償【現状】高裁
・【原告】①イオン銀行/②イセ食品更生管財人【被告】①イセ食品更生管財人/②イオン銀行【内容】①否認請求に対する異議/②預金払戻【現状】弁論
・【原告】ティーティーオー外【被告】日本郵便【内容】不法行為に基づく損害賠償控訴【現状】高裁
文化シヤッターと日本IBMは、文化シヤッターの販促管理システムの刷新とその頓挫をめぐり、文化シヤッター側が2017年11月に、27億4000万円の損害賠償を求めて日本IBMを訴えたことに端を発する。一方の日本IBMは2018年3月、12億1000万円の追加作業の未払い等で文化シヤッターを反訴していた。
#4で紹介したネットワークをめぐる「日本郵政vs.ソフトバンク」の長期にわたる巨額訴訟とほとんど同じ構図で、争いは約4年半に及んだものの、昨年2022年6月に東京地裁が下した判決は、日本IBM側が19億800万円を支払えというものだった。当然、日本IBMは呑める話ではない。そこで控訴して争いが続いている。
イオン銀行と鶏卵販売大手イセ食品管財人との訴訟。イセ食品は新型コロナ禍の拡大から資金繰りに窮し、破綻。2022年3月25日、会社更生法の手続開始が決定された。同社は創業者が現代美術の収集で名を馳せるなど、異形のオーナー企業として有名だったため、会社更生法適用申立ての“背後事情”に関心が集まった。
とはいえ、手続開始が決定されたことで、裁判所が選任した管財人の下、再建が一歩一歩進められているはずだが、債権をめぐる査定で意見の食い違いがあるのか、イオン銀行が「否認請求認容決定に対する異議」とのことで管財人弁護士らを相手に訴訟を提起。一方、管財人弁護士側はイオン銀行に対し、預金を払い戻すよう訴えている。
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