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【フランス内部通報者保護制度】現地弁護士が詳細解説《後編》

パトリック・ティエバール(Patrick Thiébart): 弁護士(フランス在住)

前編から続く)フランスにおける内部通報制度の最新事情について、同国の労働法や雇用法の専門家である、フランスのパトリック・ティエバール弁護士からの特別寄稿後編。

前回のフランスの内部通報者の定義や通報方法等に関するQ&Aに引き続き、後編では雇用主の注意事項等に関するQ&Aをお送りする。

フランス内部通報者保護法の基本《後編》

《筆者注》本稿は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、 いかなる目的においても、法律またはコンプライアンスに関する助言または意見を提供するものではありません。

Q6. 雇用主は内部通報の収集と対応に関して特定の義務を負いますか?

改正サパンII法に基づき、雇用主は、内部通報の収集と対応に関して特定の義務を負うこととなりました。

従業員50人以上の組織では、安全かつ機密保持された方法で通報を収集し対応するための内部通報ルートを設けることが義務付けられています。

内部通報制度を正式に設立する法的根拠は特にありません。労働組合と締結した労使協約や憲章などによって設置することができます。労使協議会(works council) がある場合、労使協議会に事前に相談しなければなりません。労使協議会は意見を述べる権利を有しますが、 協議会の意見には拘束力はありません。

設立後、内部通報制度については、常に従業員が利用できる状態にしておく必要があります。また、従業員50人以上の企業は、内部通報制度を社内規程(”règlement intérieur”)に組み込まなければなりません。

そして、通報を収集し対応するための内部の制度設計において、雇用主は次のことを行わなければなりません:

通報の受付方法の設定
通報者が書面または口頭で懸念を訴えたり、通報/報告の裏付けとなる情報を提供したりできる受付方法を設定しなければならない。
通報受付担当者の明示
内部通報者からの通報に対応する1名または複数名の担当者あるいは部署を、通報受付担当者として指定することができる。これらの担当者または部署は、その役職や地位により、職務遂行に必要な技能、権限、リソースを有していなければならない。また、公平な対応を保証するための仕組みも必要である。 会社が通報の受付を外部で管理することを決定した場合、第三者を指名することもできる。
通報の対応手順の明示
通報を受け付けた際には、通報者に対して、通報を受領した旨(7営業日以内)、適切な期間に通報内容について取られた措置、懸念を解消するための対応、および事案が終結した際の報告を、書面で通知しなければならない。このことは、匿名による通報にも適用される。
・収集された情報の保護に関する保証の明示
収集された情報の完全性と機密性は保証されなければならない。特に内部通報者、通報に関係する人物、そして通報に記載された第三者の身元を保証しなければならない。このため、アクセス権限を持たない従業員がこれらの情報にアクセスすることは禁止すべきである。
・外部通報手続きに関する情報の提供
外部通報手続きに関する明確でアクセス可能な情報を提供しなければならない。これには、取るべき手順や守秘義務措置に関する明確な情報伝達も含まれる。
・通報の終結、データの収集、保存の手順の確立
・「EU一般データ保護規則(GDPR)」の遵守
雇用主は、通報を収集、対応、保管する際には、GDPRを遵守しなければならない。

雇用主はまた、通報が法的要件に適合していることを保証しなければなりません。例えば、雇用主は通報者が、内部通報者あるいはその保護の対象に該当するか確認する必要があります。該当しない場合、雇用主はその理由を説明しなければなりません。

Q7. 内部通報制度を設置しなかった雇用主に対する罰…
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