【米国「フロードスター」列伝#6】会計担当者の不満と内部統制の欠如が生んだ130万ドル横領

今回は、本誌「Governance Q」と公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiners=ACFE、本部=米国テキサス州)特別連携企画「アメリカ『フロードスター』列伝」第5回「弁護士コンビの『最長インサイダー事件』」に続き、今回は第6回をお届けする。本編で焦点を当てるフロードスターは、ライアン・ホマ。経理担当のサラリーマンだった彼は、なぜ、どのようにして不正行為に手を染め、逮捕されるに至ったのか――。
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【発生年】2007~11年
【被害額】約130万ドル(当時のレートで約1億3000万~1億5300万円)
【罪種】銀行詐欺
ホマは、大学では会計を専攻し、卒業後はラケットボールのセミプロ選手として活動する傍ら、経理職のキャリアを積んできた。転機が訪れたのは、製造会社でコントローラー職(経理・財務部門の統括)として雇われた2007年のことだった。そこでの不正行為の始まりは、偶然の産物と言えるものだった――。
本特集は不正対策を使命とする世界的組織、ACFEアメリカ本部の全面協力によるものである。ACFEは日本をはじめ全世界200近い支部で構成され、9万人以上の不正対策分野のエキスパートである会員を擁し、不正防止・早期発見に取り組めるよう、さまざまな教育・支援プログラムを提供している。
その一環で、「フロードスター」と呼ばれる、有罪判決を受けた不正実行者に報酬を支払わない方針でインタビューや講演を実施し、カンファレンスやセミナー、ウェビナーなどを介して、不正対策教育プログラムに組み込んでいる。
今回もこれまでと同様のアプローチで、ACFE本部が「フロードスターとの会話」(Conversation with a Fraudster)と銘打ったインタビューをもとに、ホマのストーリーをお送りする。
なお、本記事にある「インタビュー」とは、上記インタビューを指す。そして今回も、試みレベルではあるが、1950年代のアメリカの犯罪学者ドナルド・R・クレッシーの提唱した「不正のトライアングル」にも照らし合わせてみた。
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