【わが社の内部通報#3】エムピーキッチンホールディングス 内部通報を現場からの声を会社の進化の“きっかけ”にする

「つけ麺専門店 三田製麺所」を主力ブランドとして、「東京背脂黒醤油ラーメン 伍福軒」、「日本橋とんかつ 一 HAJIME」、「薄皮餃子専門店 渋谷餃子」をてがけるエムピーキッチンホールディングス。同社は正社員約250名、アルバイト・パート従業員約1300名という体制で事業を展開している。

また、各ブランドが独自のコンセプトを持ちながらも、「人の成長が企業の成長を支える」という共通の理念を基盤に、教育・評価制度の整備、キャリアパスの可視化、外国人材の育成など、人材開発に重点を置いた経営を行っている。

「従業員の声を経営に生かすパートナー」としてDQヘルプラインを導入

飲食業界において、複数ブランドを展開し店舗数が拡大する企業では、本部と現場の情報格差が生じやすい。現場の不安や不満の声が本部に届かなくなれば、健全な職場の維持は難しい。管理本部 管理部部長の福井悟氏は、この課題に真正面から取り組んできた人物だ。

福井氏はもともと現場出身で、店舗マネジメントの経験を持つ。2020年のコロナ禍を契機に本社の管理部門に配属され、特定技能外国人材の担当としての業務と並行して、内部通報制度の立ち上げ・運用という重要な役割を担っている。

「DQヘルプラインを導入する以前の弊社では、経営者に直接意見や提案を届ける〈パルスサーベイ〉と、パルスサーベイでは相談できない悩みを受け付ける〈社内ホットライン〉という2つの仕組みを運用していました。電話やメールで相談を受け付けるホットラインは一見機能しているように見えましたが、実際には大きな課題がありました。特に深刻だったのは、匿名性の確保が不十分だったことです」と福井氏は語る。

社内ホットラインは当初、匿名通報も可能な設計だったが、運用の過程で氏名入力が必須となった結果、本当に声を上げたい従業員が躊躇するようになったという。パルスサーベイも同様の課題を抱えていた。

「毎月実施される従業員アンケートは、本来なら組織課題を早期に発見する有効なツールとなるはずでしたが、実際には一部の従業員の意見しか反映されない状況が続いていました」(福井氏)

こうした“仕組みの限界”は、組織の急速な変化の中で顕在化していった。コロナ禍による営業時間の制限、その後の営業再開に伴う人員再配置、新業態への転換など、現場では多くの変化が同時に進行していた。

「急速な組織拡大に伴い、現場と本部の間に情報格差が生まれ、報告内容のばらつきやコンプライアンス対応の属人化が課題となっていました。特に多国籍スタッフが増える中で、『どこに相談すればよいかわからない』『報告後に不利益を受けるのでは』という声も上がるようになっていました」(福井氏)

経営としても、従業員の声を早期に把握できる仕組みを整備したいという強い意向があり、内部通報制度の導入は喫緊の課題となった。

管理本部管理部部長の福井悟氏

福井氏は複数のサービスを比較検討し、その結果、2024年7月にDQヘルプラインを導入した。

選定の際に重視したのは、形式的な制度ではなく、従業員が使いやすく実際に改善につながる仕組みであること。価格だけでなく、実績・事例・秘匿性の高さを重視した。

「候補の中には立て付けは整っていても、運用面に不安が残るものもありました」(福井氏)

最終的にDQヘルプラインを選んだ理由は、①外部窓口としての中立性と信頼性、②匿名・多言語対応など現場に寄り添った設計、③レポート共有や改善提案といった伴走支援の3点だった。

「これらが他社と比較して圧倒的に優れており、弊社の文化にも合致していました。導入前から丁寧に相談に乗ってもらえたことも、制度立ち上げ担当として非常に心強かったです」(福井氏)

準備期間は約2~3カ月という短期間だったが、その間に制度設計、社内周知、店舗掲示物の作成など多方面の準備を進めた。

特に工夫したのが店舗での告知方法だ。QRコードを大きく配置したポスターを独自に作成し、スマートフォンから簡単にアクセスできるようにした。電話よりもスマートフォンでの利用が容易な飲食業界の特性を踏まえた、“現場発想”の工夫である。

さらに福井氏は、外部窓口の設置だけでなく、自身の知識面の強化にも努めた。

「公益通報制度の仕組みを一から学び、合意書や覚書の作成、調査手法など、専門知識が必要な場面では、DQヘルプラインが主催する研修会や懇親会への参加が、実務に直結する貴重な学びの機会となりました」と語る。

通報内容を分析し、教育・評価・マネジメントに生かす好循環が生まれた

2024年7月に運用を開始した当初、通報件数はゼロだった。制度が機能していないのではないかと不安を覚えたという。

「通報がないことは必ずしも悪いことではありませんが、良い兆候とも言えません。制度が認知されていないのか、利用しにくい要因があるのか、判断がつかない状況でした」(福井氏)

しかしその後、状況は一変する。ある時期から通報が集中的に寄せられるようになり、現在では当初見込んでいた件数の通報を受け付けるようになった。

「通報件数が増えたことで、早期対応や改善につながるケースが明確に増えました」(福井氏)

特に大きな変化は、〈報告しやすい雰囲気〉が社内に広がったことだ。匿名で相談できる安心感が信頼につながり、ハラスメントや労務トラブルの未然防止に寄与している。

導入から1年半が経ち、制度は確実に根付きつつある。通報件数の増加は、制度が従業員に認知され、信頼されている証といえる。匿名性が守られることで、これまで表面化しなかった問題も顕在化するようになった。

制度の最も大きな効果は、組織の透明性が向上したこと。現場で起きている問題がフィルターを通さず経営層に届くようになり、経営層は実態を正確に把握し、迅速な対応が取れるようになった。

また、問題を早期に発見・解決できるようになったことも成果だ。従来は従業員が退職してから問題が発覚するケースもあったが、現在では“芽”の段階で対応が可能になり、定着率向上にも寄与している。

「通報内容を分析することで、組織的な課題の傾向を把握できるようになり、教育・評価・マネジメント研修に反映する好循環が生まれています」(福井氏)

日本語による告知
ベトナム語による告知
ミャンマー語による告知

内部通報は「組織を強くするための仕組み」へ

「私たちは、内部通報制度を〈問題を摘発する仕組み〉ではなく、〈組織を強くする仕組み〉として捉えています」と福井氏は語る。

人手不足が深刻化する中、従業員の声に耳を傾け、働きやすい環境を整えることは、企業の持続可能性に直結する。内部通報制度は、単なるコンプライアンス対応ではなく、組織を強化するための戦略的ツールとなる。

重要なのは、制度を整えるだけでなく、実際に機能させることだ。外部窓口の設置、匿名性の確保、QRコードを活用した利用しやすい仕組みづくりなど、現場の実態に即した工夫が求められる。

「声を上げた従業員が守られるだけでなく、その声が会社の成長や改善につながる――そんな文化を根付かせたい。今後もDQヘルプラインの運用を軸に、管理職教育や職場環境のモニタリングを強化し、従業員一人ひとりが安心して働ける企業づくりを進めていきたい。〈現場からの声を会社の進化のきっかけに〉という思いを大切に、より健全で信頼される組織運営を目指します」(福井氏)

 (取材・構成=編集部)

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