【サステナ道場】欧州「CS3D」:人権・環境デューデリジェンス義務化のインパクト
高まる人権・環境リスク対応の法定化の機運
CS3Dは、2011年に国連人権理事会にて全会一致で承認された、「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)における企業側が実施すべき取り組みを具現化したものと位置づけられる。
また、CSRD、CS3Dともに、2050年のカーボンニュートラルを達成することを目的とした政策イニシアティブである「欧州グリーンディール」の一環である。
EUでは、他にも、欧州電池規則(2023年)、欧州森林破壊防止規則(24年)など、人権・環境の保護を目的とした規制が導入されており、目下、強制労働により生産された製品の域内流通・域外輸出を禁止する規則の施行の向けての取り組みが進行中である。 さらには、欧州各国においても、イギリス・現代奴隷法(2015年)、フランス・企業注意義務法(17年)、オランダ・児童労働に関するDD法(19年)、ドイツ・サプライチェーンにおけるDD法(21年)、ノルウェー・透明性法(22年)など、児童・強制労働を含む人権リスクや環境破壊などに対する企業のアカウンタビリティを高める法律が続々と成立している。
「ブリュッセル効果」はどこまで波及するのか
CSRDやCS3Dの対象となる日本企業は、多くとも1000社以内と想定されるが、欧州が決めたルールが域外適用などを通じて、やがてはグローバル・スタンダードとなるという、いわゆる「ブリュッセル効果」がサステナブルの世界でどこまで波及するのか、注視されるところである。
次回は、日本におけるビジネスと人権に関する取り組みや、人権DDの現状と課題などについて考察することとしたい。
《今回の道場訓》
CS3Dは決して他人事ではない。サステナビリティ分野については、今後も欧州界隈の動向を注視すべし!
(後編に続く)
ピックアップ
- 【2024年10月9日「適時開示ピックアップ」】太洋物産、セブン&アイ、富士精工、タカキュー…
10月9日水曜日の東京株式市場は反発した。日経平均は3万9277円で取引を終えた。この日の適時開示は152件。この中からコーポレートガバナン…
- 池田輝政「無駄なものに出費せず、人に使え」の巻【こんなとこにもガバナンス!#21】…
栗下直也:コラムニスト「こんなとこにもガバナンス!」とは(連載概要ページ) 「無駄なものに出費せず、人に使え」池田輝政(いけだ・てるまさ、戦…
- 【11/8(金)15時 無料ウェビナー】「品質危機」への警鐘《品質不正とガバナンスの最前線・連続ウェ…
本誌「Governance Q」と日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)共催無料連続ウェビナー「品質不正とガバナンスの最前線:公認不…
- 【ガバナンス道場#3】“ポリスマン”か“アドバイザー”か、それが問題だ!?「価値創造・戦略に貢献する…
監査・士(サムライ)の矜持 報告書の提言内容は決して机上の空論ではなく、メンバー5名中2名の元金融庁・財務省高官の長年の実務に裏打ちした信念…
- 「踊る大捜査線 THE MOVIE」とコンダクト・リスク【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#2】…
金融庁、日本取引所が定義する「コンダクト・リスク」とは コンダクト・リスクが注目された契機は、2012年に顕在化したLIBOR(ロンドン銀行…
- 【10/18(金)15時 無料ウェビナー】品質不正における内部通報制度の死角:その課題と対応《品質不…
本誌「Governance Q」と日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)共催無料連続ウェビナー「品質不正とガバナンスの最前線:公認不…